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2007年7月号の読みどころ

2007年06月19日発行

<通信産業バトル> 「三浦NTT」のアキレス腱

6月28日にNTTは技術系と事務系が交代でトップに就いたタスキがけ人事を崩し、事務系が2代続く形で三浦惺氏が新社長に昇格する予定ですが、船出前に早くも前途に暗雲が垂れ込めてきました。

5月23日、NTTのIP電話「ひかり電話」がまた故障して、約3時間半にわたって東西間が不通になるトラブルがその一つですが、これは技術系の地盤沈下が進んでいることの一兆候にすぎません。

もっと深刻なのは、ドコモと総務省の摩擦が頂点に達していることです。5月半ばに、WiMAXなど広域移動無線(第四世代携帯)にあてる周波数帯の割り当てで、総務省はドコモ、au、ソフトバンクなど既存の第三世代携帯電話業者を外す方針であることを表明、割り当てを当然視していた業界を青ざめさせました。

その裏には、日本通信やイーモバイルなどのMVNO(仮想移動通信業者)になかなか基地局網を有償開放しないドコモなどへの牽制があります。MVNO側は裁定申請の動きを見せており、総務省内には面従腹背のNTTグループに対する強硬論も台頭しています。このままでは2010年の経営形態見直しでも不利になりかねません。

かたやドコモの携帯は、契約の純増数でソフトバンクやauに遠く及ばないドンジリ。「そろそろ反撃」CMで売り出した新製品904iシリーズも肝心の中身に斬新さがなく、空振りに終わりました。袋小路のモバイルビジネスにどう活路を開くのか、三浦新社長の手腕が問われています。


<レームダック宰相> もはや散り際の「安倍内閣」

年金問題と松岡利勝前農水相の自殺が重なって、支持率が下がり続ける安倍内閣。「死人を出した内閣」という消えない汚点と共にレームダック化し、参院選に突入する安倍首相の苦境は、「どうせ敗れるなら、せめて散り際は美しく」の特攻気分を連想させます。不自然な登用から自殺という異常な結末にいたるまでの松岡問題は、単なる人事ミスではありません。04年、当時官房長官だった安倍氏が采配を振るった参院選で、農民の支持を民主党にさらわれた小泉政権は、急遽、松岡氏を取り込んで農政対策に奔走させますが、結局入閣させず、登用を安倍政権に引き継ぎます。歯車はそのときから狂っていたのです。

「知識や経験の欠如を埋めるために血縁や因縁に頼り、思いつきや思い込みに縛られる。『ブレーン』と称して押しかける有象無象から、人材も発想もノウハウも『不良品』を押し付けられる。」――松岡問題を引き寄せる結果となった、安倍首相の天下人の器ならざる人物像を追及します。「絶句する安倍夫妻の『公私混同』」(P80~81)も、合わせてお読みください。


<日銀ウォッチャー> 「8月にも利上げ」シグナル

消費者物価指数(CPI)が2月から3カ月連続でマイナスを記録する中、日銀が追加利上げを視野に入れ始めました。来年3月に任期を控えた福井総裁は、なんとしても「有終の美」を飾りたい。首相官邸内からは「物価がマイナスで利上げしたら世界の笑い者」、国内エコノミストの間からも「日銀の需給ギャップ試算は、どうにでも鉛筆をなめられる数字」との批判が聞こえてきます。

しかし6月6日の欧州中央銀行(ECB)の利上げと、バーナンキFRB議長発言による米国の利下げ観測後退で、米国の長期金利が急上昇して情勢が変わってきました。これを受けて日本の長期金利も1.9%台に。上昇を機に、福井総裁は逆に発言に慎重になりましたが、これは明らかに利上げのチャンスと意識しているからでしょう。

では、実施はいつか。米ヘッジファンドは7月説を仕掛けていますが、参院選前は与党に逆風が吹いている以上、やりにくい。かといって9月以降に引き延ばせば、来年3月に任期が来る福井総裁の後任人事が絡んできます。

庭先の翌日物金利を見る限り、早ければ8月ではないのか……。そのシグナルを分析します。


続いて、各分野の目玉記事です。

<企業スキャン> ヤクルト本社—ダノンが策す「三角合併第一号」

乳製品で世界の約15%のシェアを持つグローバル企業、ダノンが海外ファンドなどを使ってヤクルト本社の株式を秘密裏に買い集め、すでに40%超をおさえた模様です。ダノンの代理人は、三角合併解禁に向けた法改正を推進した藤縄憲一弁護士。ヤクルトは「三角合併第1号」となるのか、そして、ダノンにとってのヤクルトの魅力とは何なのか。ヤクルトの不祥事多発体質、創業家と現体制との確執が大きくからむ、交渉のただならぬ舞台裏に迫ります。


危うい中国マンモス「投資公司」

5月20日、中国が米国の大手私募ファンド「ブラックストーン・グループ」に30億ドルを出資する計画を発表しました。投資するのは、中国政府が設立準備をしている幻のマンモス投資機関「国家投資公司」(仮称、SIC)。シンガポールを手本に、膨大にため込んだ外貨準備の積極運用に乗り出す構想が背景にあるようですが、発足前に巨額投資をする拙速ぶりに早くも疑問視する声が上がっています。


全国5大紙VS地方紙のシェア争い

全国5大紙(朝日、毎日、読売、日経、産経)とブロック・地方紙の都道府県別発行部数のデータを独占入手しました。新聞業界でも知る人が少ない極秘データで、新聞各社の真の実力が端的に表れています。本誌掲載の一覧表をとくとご覧あれ。おのずと全国紙=朝毎読なる決まり文句が、現実とかけ離れたごろ合わせでしかないことが明らかになります。


<証券犯罪の巣窟> 「資本のハイエナ」掃討作戦

本誌2006年10月号「『資本のハイエナ』相関図」で、蜘蛛の巣のように絡み合いながらボロ株再生を謳って使い捨てる「カラ箱企業」の出資関係、無数にいるミニ村上、ミニ堀江ら「資本のハイエナ」の錬金術を解剖しました。あれから9カ月。手口を完全に読んだ捜査当局が「一罰百戒」を転換し、ようやく動き出しました。検察、警察、国税、証券監視委などが連絡協議会を開くようになり、ハイエナ一味を「一網打尽にする」という明確な意思が当局に生まれたのです。あちらこちらで断末魔の叫びが聞こえます。生き残ったITの「勝ち組」も、そろそろ年貢の納め時でしょうか。


6月号のフリー・コンテンツは以下の11本です。6月25日以降、順次アップしていきますので、ぜひお読みください。

【6月25日掲載】
iPodの著作権料 朝日「誤報」の裏の裏
著作権者に未配分の構図は、音楽業界の「社保庁」を思わせる。JASRACのお粗末な管理の実態が浮き彫りに。

「電波利用料」引き上げへ 総務相の腹を探る放送業界
かつてなく厳しい視聴者の目にさらされる放送業界。優位を維持できるかどうか。

【6月26日掲載】
札付き「サンライズ社」を退場させた大証の怨念
「インターネット総研」上場廃止に便乗した、どさくさ紛れの処理か。

絶句する安倍夫妻の「公私混同」
アッキーが号泣しながら総理大臣の弔辞を代読。公私のケジメのかけらもない。

【6月27日掲載】
英HMVの日本法人買収でCCCとドコモが激突
1人勝ち目指すCCCと、何とかそれを阻止したいドコモ。熾烈な争奪戦となりそう。

次期参院議長に片山虎氏
当の片山氏は地元対決に戦々恐々。それどころではない様子だが……?

【6月28日掲載】
ベンツ国内販売台数が激減 景気拡大に変調の兆し?
欧州車の人気に暗雲。ベンツ、4月の販売台数は実に26%減。

「官製」イスラム金融が尻すぼみになった理由
ハードルが高い割に必要性が乏しく、イスラム金融ブームは早くも霧消の一途。

【6月29日掲載】
戦争「外注化」イラクでお手上げ
“現代の傭兵”は4万8千人駐在。米正規軍増派も焼け石に水で、民間軍事会社が槍玉に。

経団連の政治献金増額に主要企業が大ブーイング
「いいかげんにしてほしい」と大手企業が大反発。キヤノンの出方が注目される。

【7月2日掲載】
日本語の起源はラテン語? 夢とロマンの「新説」が話題に
国際金融マン・与謝野達氏による異色の書。「こころ=corculum」「哀れ=avare」「がんばれ=quam vale」など約700語で「新説」を説く。