「電波利用料」引き上げへ総務相の腹を探る放送業界

2007年7月号 POLITICS [ポリティクス・インサイド]

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国が無線局の免許保有者から徴収している「電波利用料」に関し、菅義偉総務相がテレビ局の負担分を大幅に引き上げる考えを表明した。NHKや民放は携帯電話会社に比べて支払い額が非常に小さいことなどから、「受益と負担の理屈が立つようにする」というのが理由だ。

利用料は3年ごとの見直しが定められており、総務省の研究会が今夏に報告書をまとめる予定。放送業界は菅氏がどの程度の値上げを考えているのか、腹を探ろうと懸命だ。

電波利用料制度は1993年導入。保有する基地局数などに応じて集めた資金を、電波監視施設の整備や電波を有効利用するための研究開発などに充てる仕組みだ。

総務省によれば、2007年度予算で電波利用料収入は約653億円を予定。このうち、テレビ局の負担は約38億円で6%程度。携帯会社の86%と大きな差があるほか、国の放送関連の支出に比べても約6分の1だ。携帯電話の端末も基地局とカウントするため、携帯会社の負担が必然的に大きくなる。携帯業界などが制度の見直しを訴えているゆえんだ。

国が利用料を大幅に引き上げた場合、地上デジタル放送の設備投資が重荷になっている地方局にとっては、経営がさらに圧迫されかねない。

放送業界は「営利目的の通信事業と、公共的役割を担う放送局とは事業の性格が違う」(橋本元一NHK会長)と慎重な対応を求めている。

ただ、番組捏造問題などで放送局に対する視聴者の目はかつてないほど厳しい。電波を独占的に使える放送局が電波利用料で優位な立場を維持できるかどうかは微妙な情勢だ。

   

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