2010年9月号の読みどころ
2010年08月19日発行
景気悪化で「日本型デフレ」を警戒する米国。バーナンキ米FRB議長は8月10日、連邦公開市場委員会で一段の金融緩和を決めました。いったんデフレに陥れば脱却は容易でないことをよく認識しており、MBSや政府系機関債の満期償還金は長期国債購入にあてるという形で、出口政策を断念して「量的緩和」方向へカジを切り直したのです。しかし日銀は、同じ日の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決定、12日にようやく円高警戒声明を発表したものの、頑として動きませんでした。「二番底」の懸念がふくらむ米国や欧州が狙うのは、自国通貨安による外需拡大。無策はもはや「人災」です。
8月2日、日本振興銀行の社外取締役を務めていた赤坂俊哉弁護士の死が報じられました。突然の「自殺」報道に首を傾げる知人たち。死を選ぶほどの理由があったのでしょうか。その謎を追う中、FACTAは「振興銀行の闇」をえぐる資料を入手しました。新興銀支配下の「中小企業信用機構」をめぐるその資料の中には、木村剛前会長のメモやメールが多数含まれ、ネットワーク企業群の損失隠しのスキームや、会計士業界・関係者を巻き込むすさまじい裏側があらわに。闇の核心に迫る独走スクープです。
パナソニックが、パナソニック電工と三洋電機を来年4月に完全子会社化すると発表しました。財務体質の改善が優先といわれていた矢先の大幅な前倒し。引き金は外部環境の変化とはいうものの、先を急ぐ事情がありました。三洋では子会社三洋CEや系列販売店をめぐりパナソニックへの不満が募り、溝は深まるばかり。パナ電工とも軋轢が増幅していました。子会社化は、言うことをきかない2社を捩じ伏せた形。大坪文雄社長の剛腕は果たして勝機につながるのでしょうか。
先の参院選では、「みんなの党」躍進に注目が集まりました。しかし本当の勝者は別にいます。与党と手を結べば過半数を超える議席数を持つ公明党です。事実、党幹部は「仏の見えざる手に導かれた」と語り、キャスティングボートを握ったことを強調する「教宣」活動。菅・仙谷両氏は「仏敵」なので相手にせず、小沢氏の復権に期待し、民主党代表選が終わるまで様子見の模様です。早期解散を望まない公明党は今後、どう動くのか。秋以降の政局の核心に迫ります。
わずか1年半で株価が30倍以上となった大証上場のIT企業「セラーテムテクノロジー」。昨年、第三者割当増資で中国系ファンドが株の5割強を握り、北京の中国企業を買収して外資が本来受注できないスマートグリッド関連の受注を次々と発表しています。しかし、買収先の企業オフィスはがらんとして、電話もつながらず、実体があるのかどうか不明です。セラーテムの監査法人もオフィスのない幽霊……と疑惑が次々と浮かび上がってきました。しかもセラーテムは、東証1部上場の“死に体”中国企業チャイナ・ボーチーと事実上一体化。奇怪な相関図から浮かぶのは「中国のハイエナ」が日本の不振企業を「ハコ」にした裏口上場の疑いなのです。FACTAの調査報道が日中の国境を越えて追及、大証と東証の盲点を突いた大がかりな疑惑を暴きだしました。
8月26日以降、フリー・コンテンツを順次アップしていきます。