2011年4月号の読みどころ
2011年03月19日発行
未曾有の大地震によって引き起こされた福島第一原発爆発・損傷は、実は「人災」ではないのか。IAEAレベルで当初4と発表されましたが、東京電力は早くから「スリーマイル以上、チェルノブイリ未満」、つまり原発が制御不能に陥るレベル6と判断していたのではないか。その規模なら100キロ圏内に避難勧告および命令を出すべきなのに後手に回り、菅首相自ら東電に乗り込んで「政治主導」を演出するパフォーマンス優先。実態を隠して事態を悪化させた政府の報道管制にも検証が必要です。
東日本を襲った巨大地震と大津波、そして福島第一原発の炉心溶融は、日本に深いトラウマを残すことになるでしょう。何もかも押し流され、機能マヒした光景――。この「根こそぎ」の現実に、被災地のみならず企業も「いかに生き延びるか」の解答を出さなければなりません。2月に発表された新日本製鉄・住友金属の経営統合は、大選別で強者による産業再編をめざした「新・日本株式会社」の先触れ。経済産業省の産業構造ビジョンがめざす資本集約は、鉄鋼にとどまりません。原発事故で馬脚を現し広域災害に対処を誤った電力業界は、松永安左右衛門の10電力体制の撤廃も含めて候補筆頭です。
村山美知子社主が保有する株式を系列のテレビ朝日などに分散させ、株式離散リスクの問題を乗り越えたばかりの朝日新聞。ところが新たな頭痛の種が生じています。第2位の株主となったテレ朝が、先頃韓国の中央日報が設立する新テレビ局に出資、業務提携すると発表。これは東亜日報と提携する築地(朝日新聞)を仰天させる「裏切り」でした。テレ朝の早河社長は朝日新聞の秋山社長とは口もきかない不仲。三浦・小田子飼いの親衛隊で固め背を向ける六本木(テレ朝)に、築地が大ナタを振るおうとしています。
[待ったなしの「国内リストラ」] 「渡辺更迭」トヨタで何が起こったか
トヨタの豊田章男社長が経営方針「グローバルビジョン」を発表。記者会見はリーダーシップを意識した独演会でした。発表直前には前社長の渡辺副会長を相談役に更迭、副社長も監査役に。名実ともに「皇帝」となった章男氏は財界活動には冷ややかで、渡辺氏が副会長を務める日本経団連で憶測を呼んでいます。一方で「グローバルビジョン」には危機感が乏しく、国内のリストラが急務との指摘も。「皇帝」に直言できないムードが社内に漂うなか、章男氏の「器」が問われています。
一時は不出馬と見られていた石原慎太郎現知事が「究極の後出しジャンケン」。早くから石原「家臣団」が裏で暗躍、オリンピック誘致再挑戦、築地卸売市場移転・新銀行東京処理を「ダミー」松沢成文神奈川県知事に継承させるつもりでしたが、引退報道に怒り、松沢氏の人気も盛り上がらないとあって豹変したのです。しかし、都議会で出馬表明した直後、大震災の発生によりサプライズはニュースの片隅に追いやられました。自らの「我欲」を棚にあげ、震災を「日本の我欲に下った天罰」と暴言を吐いた石原知事こそ、天罰が下ったのではないでしょうか。
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