2008年9月号の読みどころ
2008年08月19日発行
「アジアの中核市場」の地位の再確立を掲げる東証が、その目玉として昨年4月にマザーズに上場させた中国本土系企業で、CEOの横領が発覚しました。赤っ恥どころか、企業の鑑識眼ゼロであることが明るみにでて、計画中のプロ投資家向け市場「日本版AIM」まで遠のきました。2期連続の減益に加え、みずほ証券との訴訟やシステム整備の弱点もあり、東証自身の上場という悲願達成も危うい状況。社内では“恐怖政治”を敷く斉藤惇社長の「器」を問う巻頭記事です。
[虎の威を借る「技術顧問」] キヤノンが絞め殺す「研究開発」
「モチベーションは低下し、とても新規事業など起きそうにない……」と綴るのは、本誌が入手した内部告発文書。今、キヤノン研究陣に何が起こっているのでしょうか。インクで稼ぐが、独創的な新製品はさっぱり、巨費を投じた薄型テレビ用パネル「SED」事業も暗礁に乗り上げています。そこでワンマン会長の御手洗冨士夫氏が社外から顧問として招いたのが、華麗な経歴を持つ元東大教授の生駒俊明氏。研究開発(R&D)部門トップに就いて、貴重な研究テーマを次々に切り捨て、研究員は萎縮するばかりです。
今年2月、バーナンキFRB議長が米地方銀行の破綻を予言しましたが、その通り、住宅ローンで急成長してきたインディマック銀行など8行の中小地銀が破綻しました。市場が蒸発した証券化商品を抱えて、オフバランス(簿外資産)で損失が膨らむシティグループはじめ、大手投資銀行が軒並み自己資本不足に陥っています。苦境の大手メリルリンチが増資に際してシンガポールの政府系ファンドと結んだ契約には、窮したゆえの不平等条項も。次の危機がひたひたと迫っていることは明らかです。
中国の警察(公安)や司法では、北京五輪のために極度の緊張状態が続いています。しかし開幕直前も開幕してからも、公安局が焼き討ちに遭うなど各地で数万人規模の暴動やテロ事件が発生しています。一部メディアや世論は、政府を批判し逮捕された者に同情を表明し、ブログでは自らの任務に疑問や不安を吐露する警官さえ現れています。経済の翳りや四川大地震で不満のマグマを抱えた市民たちは死をも恐れないほど追い詰められているのです。党のパワーが衰弱し、社会矛盾が炸裂するファクターがそろいつつある今、五輪後は全国規模の動乱が起きる可能性さえ出ています。
福田首相が解散権を麻生幹事長に委ねたとする「禅譲密約」説が消えません。首相はすっかり影が薄くなり、エンジン全開の麻生幹事長はバラマキ政策や人事にまで言及しています。しかし、内閣改造で人選にあれこれ細かく注文をつけた結果、上げ潮派の中川氏が実権を握る町村派や津島派など大派閥から恨みを買いました。これまでも変節を繰り返してきたかに見える麻生氏は、野心剥き出しで「嫌われ者」になり、政策決定過程で要の与謝野馨経財相が急浮上する可能性もあります。
改革派知事として圧倒的な人気を誇りながら、収賄罪で起訴され、8月8日に有罪判決を受けた佐藤栄佐久・前福島県知事。本誌は判決以前から事件をフォローし、前知事本人と接触してきました。裁判過程では検察の強引な捜査が明らかになっています。父が創業した会社を経営する弟・祐二が、前田建設・水谷建設が絡む土地の売買で受け取った金は、前知事へのダム工事受注の謝礼だった――。検察のシナリオを認めたのはなぜか、有罪判決を受けて苦悩する理由はどこにあるのか。前知事の心境に本誌が肉薄します。
前年比マイナスが並ぶ惨状はまさに火の車と言えましょう。新聞53社のこの夏のボーナス一覧で一目瞭然です。本誌が新聞労連、日本新聞協会の資料をもとに独自調査し、一挙掲載しました。主因は屋台骨を支える広告収入の激減で、新聞広告費はいまやネット広告費に逆転される寸前。にもかかわらず消極的な対応に終始する経営陣を、新聞労連は「薪集めの恐竜」にたとえましたが、この恐竜、絶滅は免れられるのでしょうか。
8月26日以降、フリー・コンテンツを順次アップしていきます。