2008年2月号の読みどころ
2008年01月19日発行
いち早く米国のサブプライムローン関連の損失1400億円を直接償却した野村ですが、社内ではむしろ古賀信行社長の退陣観測がくすぶります。米国では巨額損失を出したシティグループ、メリルリンチ、ベアー・スターンズのCEOが相次いで辞任に追い込まれましたが、役員報酬のカット程度で乗り切ろうとする古賀の優柔不断に批判が湧き起こっています。氏家会長に気兼ねして失敗続きの米国野村に手を拱き、ネット進出に出遅れて自慢の国内営業力が衰弱、追い上げる銀行勢に反撃もできず、メリル出資話も機を逸した古賀社長の「リスクをとらぬリスク」に社内は歯ぎしりしています。
大分のちっぽけなコンサルタント会社に東京国税局の査察が入りました。そこに浮かび上がったスーパーゼネコン、鹿島の巨額の「裏金」に、東京地検特捜部が動き出しました。FACTAが入手した内部文書では、キヤノン子会社が大分県内に建設した2工場について、キヤノン常務が県の公社に対し鹿島に受注させるよう強力に働きかけています。そこにこのコンサル会社の影がちらつくのですが、この会社社長の兄が日本経団連会長の御手洗会長と高校時代以来の知人。御手洗会長の横浜の自宅も土地購入から施工・設計まで世話になったとあって、にわかに会長の関与が取りざたされ始めました。
1月内閣改造を断念した福田首相は、奇妙な孤立状態に陥っています。衆参ねじれ現象で綱渡りの国会運営を強いられるなかで、「反福田」の動きが出ているわけでもないのに、党三役だけでなく、女房役の町村官房長官までもが、自分の都合を優先させ、首相を担いでも支えようとせず、てんでばらばらになっています。官邸機能不全のなかで、結果的に無為を選んだ福田首相は、この政権をどこまで維持できるのでしょうか。
たった3カ月で1兆円、2兆円の損失を出す米国の金融機関に驚いてはいけません。市場が蒸発したサブプライムローンの証券化商品の“ババ”をつかまされたのはむしろヘッジファンドなのです。OECD推計では、合成債務担保証券<CDO>の46%、150兆円はファンドが保有しています。その中身を見れば、格付けの低いものや無格付けなどハイリスクです。ここに火がつけば、ファンドに350兆円もの与信を持つ金融機関はダブルパンチ。バーナンキFRB議長が大幅利下げを示唆し、ブッシュ大統領やポールソン財務長官が10兆円を超す経済てこ入れ策を検討中なのもうなずけます。
北京五輪まであと8ヶ月。チベットとともに中国建国以来、独立運動が弾圧されてきた新疆ウイグル自治区では、王楽泉党委員会書記が「国際テロ勢力の結集」に対する警戒を訴え、隣接する中央アジアや、インドなど南アジア、さらにはドイツなど欧州も巻き込んで、イスラム系独立運動の包囲網を形成し、摘発を強化しています。しかしテロ封じの名目のもと、少数民族抑圧のために内外に宣伝工作を行うのが主眼ではないでしょうか。
医学のみならず日本の科学界に久々の大戦果——京都大学の山中伸弥教授が成功した「万能細胞」は、従来の生殖細胞からでなく、皮膚細胞をつかってあらゆる臓器や組織の細胞をつくりだせるips細胞。総勢20人足らずのチーム山中がなし遂げた偉業は、まさに再生医療の希望の星ですが、圧倒的な人数と資金力の米国勢の追い上げが急です。文部科学省などが来年度予算で研究費を8倍に増やしましたが、どこまでリードを保てるでしょうか。
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