2007年10月号の読みどころ
2007年09月20日発行
戦後政治史上、最低最悪の政権放り出しとなった9月12日。永田町の乱が幕をあけました。安倍晋三首相の唐突な辞任表明は、麻生太郎・自民党幹事長と与謝野馨官房長官に実権を剥ぎとられた挙句の「自爆テロ」でした。
麻生氏は総理まであと一歩で安倍の「自爆テロ」の巻き添えを食らい、シナリオが大きく狂いました。道連れは自民党も同様です。派閥政治と世代交代の波がぶつかる混沌へと再び陥り、来るべき総選挙で小沢民主党に大敗するかもしれません。
9月12日、日経新聞は農林中金と野村証券、そして日本政策投資銀行が合弁でプライベートエクイティ(未公開株式)ファンドの評価会社を設立することを報じました。実はこれは、日経が一カ月前に一面トップで報じた「農林中金、日興プリンシパル買収へ」報道の訂正記事でした。
日興プリンシパルインベストメンツ(NPI)は、日興コーディアルの投資子会社。記事では、農中が日興コーディアルの筆頭株主である米シティに買収を持ちかけ、色よい返事を得たと報じられています。「そうはさせまい」と横車を押したのは、大型買収で脚光を浴びるブラックストーン・グループです。
両者がなぜNPIを争奪するのか。理由を探っていくと、農中がファンド化している実態が浮かび上がります。農中の総資産は68兆円と、ブラックストーンを凌駕する巨艦なのです。
サブプライム問題によって金融市場に赤信号が点滅し、世界の金融関係者が渇望するのは、危機には金融緩和で市場を助けた前FRB議長のグリーンスパン氏です。しかし、サブプライムの元凶はグリーンスパン氏でもありました。
8月31日付のウォールストリート・ジャーナルの社説は「バーナンキの歌」と題し、旧約聖書をもじった歌で現状を憂えながら、金融ジャブジャブ路線に頼ったグリーンスパン流を踏襲してはならない、と警告します。前任者の「負の遺産」と格闘するバーナンキは、どのような解を出すでしょうか。米国の後を周回遅れで追っている日本にとっても他人事ではありません。
05年、相次ぐスキャンダルで危機に瀕したみちのく銀行からSOSを受け、みずほ主導の大リストラが始まりました。しかし、みずほの狙いはみちのく再建より、みちのくのロシア現地法人でした。みちのくに送り込んだ旧富士銀行の会長は、この現法をみずほCBに譲渡してしまいます。
しかしその条件は、みちのくにとって大出血。「利益相反の疑いがある」と内情に詳しい関係者は声をひそめます。譲渡契約の裏で結ばれた、常識では考えられない「密約」を明かすメモを編集部は入手、金融庁もこの利益相反をマークしています。
中国人民解放軍は今年で80周年を迎えました。8月に行われた記念式典には、引退した江沢民前国家主席が出席し、軍指導部との親密さを見せ付けました。齢80を超えて江沢民が必死で権力にしがみ付く理由は、党が展開する「反腐敗キャンペーン」から一族郎党を守るため。
しかし、地方レベルでは既に胡錦涛と江沢民の権力闘争はすでに勝負がついています。江沢民の牙城、上海も切り崩され、軍の中枢部からも江沢民派は一掃されつつあります。中国・人権民主化運動センター主席、盧四清氏の特別寄稿です。
米軍が駐留を続けるイラクでは、引き続きテロが横行しているものの、持続可能な安定に向けて多少の望みは持てる状況になってきました。今年1月にブッシュ大統領が打ち出した米軍増派の賭けが、とどめの「一押し」の役を果たしたようです。
潮目は変わったのでしょうか。戦場が単に拡散しただけなのでしょうか。ブッシュ政権は3万人の駐留軍削減を打ち出しました。7月にイラクを視察し、ニューヨーク・タイムズ紙に「勝てるかもしれない戦争」を書いた米ブルッキングス研究所上級研究員マイケル・オハンロン氏による特別寄稿です。
7月16日の地震発生の日から2カ月。この間、伏せられてきた政府と東京電力の舞台裏をレポートします。第一幕は現地視察で参院選の劣勢を挽回しようとした安倍首相と、東電丸がかえの甘利明経済産業相のエゴ丸出しのドタバタ劇です。
第二幕は真夏の電力需要期を迎えて、「大停電」の窮地に追い詰められた東電の綱渡り劇。紙一重で東京などの大停電をかわしたものの、柏崎原発は再開のメドが立ちません。
※フリー・コンテンツは、9月25日以降、順次アップしていきます。