2007年9月号の読みどころ
2007年08月20日発行
参院選後の市ヶ谷は、次官人事で大揺れです。小池百合子防衛相が「防衛省の天皇」守屋武昌事務次官を斬って、警察庁出身者を起用しようとしましたが、次官は「約束が違う」と大臣室に怒鳴り込み、事前根回しがなかったと塩崎恭久官房長官も参戦、安倍晋三首相に仲裁を仰ぐ事態になりました。組閣どころではなく、政権は末期状態です。
小池氏のスタンドプレーと、後任人事だけは譲るまいと粘る守屋氏の執念の内側で、なにが起きているのでしょうか。首相官邸のある関係者は、小池氏について「“あの件”が防衛省を直撃しても、内閣への波及を食い止めたと手柄にしたいのだろう」と声を潜めます。“あの件”とは、地検特捜部が8月後半から着手すると言われる疑惑のこと。本誌6月号「防衛省震撼『山田洋行』の闇」で予見したとおり、防衛省幹部を直撃するスキャンダル爆弾が炸裂寸前なのです。今日の確固たる地位を築いた「政治銘柄」、山田洋行のビジネスモデルの源流をたどり、それが現在の疑惑につながる構図を明らかにします。
海外事業の拡大を進め、今や販売台数の8割が海外のホンダ。二輪車の地ならしでリスクを軽減しながら本格的に打って出るその商売のうまさには、2兆2千億円の利益を上げるトヨタも舌を巻くほどの優良企業です。しかし、絶好調の海外ビジネスとは対照的なのがお膝元の日本での完全な「負け組」ぶり。極度の販売不振が続いて新車「エディックス」も空振りに終わり、歴代経営者の「負けず嫌い」DNAはどこに行ったのかと思わせる惨憺たる状況です。過去に「グローバル化のお手本」と言われながら、お膝元にノウハウが残らずに淘汰されたアイワと同じ轍を、ホンダは踏まないのでしょうか。
参院選の歴史的大敗を受けて、自民党の議員たちから「やめろコール」を浴びせられる安倍首相。青木幹雄前参院議員会長、森喜郎元首相、中川秀直幹事長の3人は、続投を真っ先に容認したことになっていますが、投開票日の密議で「退陣不可避・福田暫定政権」で合意したことを約1週間後、一斉にマスコミに流し、最後通牒を突きつけたのです。
「ゼロから出直す」という組閣人事では、麻生太郎外相をはじめ何人かの再任が予想されており、骨格は変わり映えがしません。「居座り」安倍首相の余命を診断します。
8月利上げをめざす日銀の利上げシナリオが危うくなっています。大敗した自民党や、死に体となった政権の圧力は薄れたとはいえ、今度は「ポスト福井」を人質に民主党が牽制球を投げてきており、「武藤総裁」を渇望する財務省は民主党幹部との取引に奔走しています。さらに、サブプライムローン問題で日米欧が短期金融市場に資金注入、不安定な株価などブレーキ要因は数々あり、日銀は厳しい選択を迫られています。
独自の進化を遂げた高機能端末が数多く存在し、独自のビジネスモデル(生態系)があるが、外敵には極めて弱い。そんな携帯電話大国ニッポンに「i」と「g」の2つの黒船が現れました。アメリカで発売されたアップル「iフォン」は抜群の使い心地に加え、通信事業者優位の力関係に風穴をあけるなど、日本モデルを破壊する存在。検索エンジンの巨人、グーグルも携帯参入を狙っており、画期的な「オープン化」戦略の「gフォン」が米国で成功すれば、欧州やアジアにも進出するでしょう。翻って、「オープン型」への1日も早い切り替えが求められるドコモなど日本勢の時代錯誤は目を覆う惨状です。
TBSの経営統合問題では、先のTBS株主総会で予想をこえる敗北を喫した楽天。株価も年初来の最安値更新が続いています。三木谷浩史社長の迷走は、それでもとどまることを知りません。成算のない事業買収などで経営が厳しさを増す中、有望な投資先を手放さざるを得ない本末転倒がおきています。もっと深刻なのは、耳の痛い進言に耳を貸さない態度が創業時からの幹部と軋轢を生んで、社員が次々に離脱していることです。今春以降はナンバー2の国重惇史副社長も干されているようです。10月にも発動されるTBSの防衛策は、進むも地獄、戻るも地獄の楽天を追い詰める結果となりそうです。
米国土安全保障省のチャートフ長官は、米国がこの夏以降、テロ攻撃に遭う可能性があるという「勘」を得て懸念を表明しましたが、筆者はこれを見過ごしてはならないと訴えます。アフリカ西岸からインドネシア東岸にかけての各地域で不穏が続いており、なかでもジハード過激派やイスラム原理主義者たちの跋扈する温床となる何千もの神学校をかかえるパキスタンは、世界でもっとも暴発リスクの高い地域です。いまの状況を「不気味なほど第1次大戦前夜に似ていないだろうか」と問いかける米戦略国際問題研究所上級顧問のハーラン・ウルマン氏による特別寄稿です。
9月号のフリー・コンテンツは以下の12本です。8月20日以降、順次アップしていきますので、ぜひお読みください。
【8月20日掲載】
<Book Review>『靖国戦後秘史 A級戦犯を合祀した男』
「A級戦犯合祀」の真相突く決定版。
【8月27日掲載】
北朝鮮送金ルートの銀行 三菱東京がコルレス口座
凍結資金の送金ルート上に浮かんだ「ダルコムバンク」。ヒル国務次官補に抜け道をささやいたのは国際金融の裏ネットワークか。
処分直前のフルキャストにインサイダー疑惑が浮上
業務停止命令の処分前、14.6%の値下がり率を記録したフルキャスト株。不祥事までライバル、グッドウィルの後追いか。
【8月28日掲載】
<連載>硯の海 当世「言の葉」考 第17回「最大の敗因は『美しい国』」
政治コラムニスト・田勢康弘氏による激震コラム。
介護現場を顧みない渡辺美樹・ワタミ社長
現場に即さぬ渡辺社長の手法に、批難が高まっている。買収した「アールの介護」でも社員が大量退職。
【8月29日掲載】
NOVAを擁護した悪いやつら
国民生活センターに寄せられた6千件の苦情が闇に葬られた真相。
「夕刊フジ」が赤字転落 リストラで苦境打破へ
休刊を視野に入れた大なたを振るう、との観測が流れているが……?
【8月30日掲載】
南アフリカはいま「無差別」犯罪大国
大丈夫か、2010年サッカー・ワールドカップ開催。殺人、強盗、レイプが多発し、ムベキ政権は重い腰を上げたが。
深谷隆司の衆院東京2区に保坂三蔵を擁立シナリオ
参院選で敗れた実力派、保坂氏は実はこれまで選挙に負け知らず。早くも次期衆院選への出馬待望論が浮上。
【8月31日掲載】
「寒い国のヒットマン」逮捕 MI6が2度阻止した暗殺
英ロはリトビネンコ事件で互いに外交官を国外追放したばかり。暗殺未遂で両国間の危機はさらに深刻に。
「安倍痛烈批判」の田村氏が高知県知事選に出馬か
出馬すれば、再び安倍政権を批難するのは必至。自民党執行部は対応に苦しみそう。