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2007年4月号の読みどころ

2007年03月20日発行

<企業スキャン> 東京電力-勝俣退陣のXデー
電力会社の事故隠し、データ改竄が次々に露見しています。原発では東京電力の柏崎刈羽、福島第二、東北電力の女川、そして北陸電力の志賀で起きた重大事故を国に報告していないことが明らかになり、電力会社への不信は頂点に達しました。業界のリーダーである東電の勝俣恒久社長は、電気事業連合会(電事連)の会長でもあり、窮地に立たされ、「引責辞任」の足音が聞こえる事態となりました。

東電には4年半前のトラウマがあります。原子炉の中心部のヒビ割れを隠蔽、現役の社長を含め歴代4代の社長経験者が総退陣したことです。勝俣体制はその後始末役として登場したのですが、今また新たなトラブル隠しが発覚し、あれほど透明性を約束した改革はいったい何だったのか、と疑問視する声があがっています。

しかし、重大な事故隠しは80年代、90年代の古傷がほとんど。責任は現経営陣というより、過去の経営の遺産なのです。だとすれば、東電はこれを奇貨として、積年の通弊を清算する、という考え方もできます。

とりわけ東電が苦慮しているのが、昨年、東京地検特捜部が摘発した佐藤栄佐久・前福島県知事の贈収賄事件の延長線で、荒木浩顧問(元会長)が事情聴取されるなど、福島原発関連で俎上にのぼったことです。捜査は特捜部長の交代で頓挫しましたが、裏では東電首脳との「ニギリ」があったとの説があります。退陣の口実として「過去の咎」を一身に背負うという選択もあるのではないでしょうか。


<日本企業M&A> 猛禽ファンド「スティール」
サッポロHDに敵対的なTOBをかけた米国のヘッジファンド「スティール・パートナーズ」。その「日本株ファンド」が保有する銘柄は40社程度、資産規模は4000億円程度と言われています。その総帥は41歳の社長、ウォーレン・リヒテンシュタイン。日本に上陸した頃は50億円程度だった小さなファンドが獰猛さを強めながら急成長した軌跡を追跡しました。「ハゲタカ」が死に体企業の“腐肉”を漁るファンドだとするなら、スティールは「ヘッジファンド・アクティビスト」として生きた企業を狙う「猛禽」でしょう。ファンド規制とともに正体を暴きました。


<ノンバンク危機> 信販「優等生」ジャックスの仮面
グレーゾーン金利の撤廃で過払い請求の嵐が吹き荒れています。信販会社も赤字転落が続出する中、大手3社で唯一、当期黒字を見込む信販「優等生」ジャックス。2月に報じられた15万件の顧客データ流出事件で揺れましたが、取材を進めた編集部は衝撃のマル秘内部文書を入手。そこには「経営が堅実」という世間一般の評価からはかけ離れた実態が記されていました(編集長ブログ「マル秘加盟店リスト」参照)。大量の自己破産者にカードを発行し、倒産寸前の企業を加盟店として認める、といった無理な拡大路線は社内抗争の火種となり、流出した別の内部資料は決算の情報開示上の疑惑も暴露しています。


続いて、各分野の目玉記事です。

<核管理グレートゲーム> 「原子力」協定で日ロ急接近
2月28日、ロシアのミハイル・フラトコフ首相と安倍晋三首相による会談で、日ロ間の原子力協定交渉開始が正式に決まりました。その1週間前に報じられた読売新聞のスクープを受けて、同交渉を担当するロシア連邦原子力庁のセルゲイ・キリエンコ長官も来日を決めたほどで、日ロ間は当事者も驚くスピードで急接近しました。同じ時期に、米国における反ロシアの最強硬派、トム・ラントス下院外交委員会委員長がイランの核開発を平和裏に封じ込めるため対ロ譲歩を示唆する会見をモスクワで行っています。対する武力行使派の急先鋒、チェイニー米副大統領は日本で安倍首相と会談を行っています。日ロ接近は、2国間にとってもさることながら、「対イラン」政策をめぐって壮大な駆け引きを繰り広げるワシントンにとっても重要な意味を持っています。


<開き直る「お坊ちゃま宰相」>参院選まで内閣改造なし
この数カ月、内閣改造騒ぎの渦中で目いっぱい虚勢を張り、開き直りの態度をみせてきた安倍晋三首相。「お坊ちゃま宰相」として独特の図々しさ、勝負強さがよく表れたこの時期、水面下では中川秀直自民党幹事長の号令で「チーム小泉」が復活、政権指南と選挙指揮の前線に乗り出そうと試みます。しかし、その出過ぎた言動は安倍氏を怒らせ、かねてからの溝を深めるだけに終わりました。内閣改造騒ぎには終止符が打たれ、早くも秋の人事をにらんだ猟官運動がはじまっていますが、中川氏が参院選後の政権で居場所を見つけるためには、相当な権謀術数が求められるでしょう。


3月号のフリー・コンテンツは以下の11本です。3月26日以降、順次アップしていきますので、ぜひお読みください。

【3月26日掲載】
北川元三重県知事が猛進「マニフェスト運動」
広告塔は東国原宮崎県知事。都知事選を試金石に「北川新党」待望論が湧き起こるか。

所詮「ババ抜きゲーム」のIXI粉飾決算事件
2005年以前から架空取引に手を染めてきたIXIをめぐってこの数年、繰り広げられたM&Aをひと言で例えるなら「ババ抜きゲーム」。

【3月27日掲載】
ベンチャー「無法地帯」と化す大証ヘラクレス
簿外債務や架空取引、元暴力団組長の経営者……。不祥事のオンパレードで、「第二のライブドア」も出現か。

ポスト安倍に再び野田聖子?
復権を狙う自民党の古賀元幹事長が「ポスト安倍」候補に野田聖子元郵政相を再び担ぎ出す気配。野田氏は迷惑そうな素振りを見せるが……?

【3月28日掲載】
首都圏私鉄が一斉に「パスモ」 大所帯すぎて不協和音
パスモを一斉導入した私鉄やバスなど97社の間で生じた不協和音がフェリカの全国制覇に影を投げかける。

6カ国協議の対朝〝弱腰〟にヒル米首席代表が槍玉
ネオコンや国防総省は譲歩しすぎのヒルに非難集中。実は、外交の成果が乏しく、焦って対朝譲歩を進めるライス国務長官こそ、ほんとうの標的?

【3月29日掲載】
三洋電機に「新たな危機」 ゴールドマンが株式売却?
SESCから内々に決算訂正を求められた三洋に対し、巨額増資に「応じさせられた」思いを抱くゴールドマンが契約違反を主張。株式売却に出る可能性も。

もっとまじめに! 根本首相補佐官殿
目立ちたがり屋で熱意に乏しい根本氏の仕事ぶりに官邸、与党、霞が関から失望の声が噴出。

【3月30日掲載】
トステムの身勝手人事にINAXが無言の「抗議」
住生活グループが一時、次期社長がいないという異例の事態を迎え、統合から5年半経ってもぎくしゃくするトステムとINAXの摩擦が浮き彫りに。

菅総務相が演じた生田総裁退任の「茶番劇」
生田総裁の反撃会見であっさり嘘がばれ、絵に描いたような茶番劇を演じた菅総務相。主要閣僚としての資質が問われる。