2010年3月号の読みどころ
2010年02月19日発行
リーマン危機脱出の過程で起きた過剰流動性相場が終わろうとしています。アメリカではカーター、レーガン政権下でFRB議長を務めた82歳の巨漢ポール・ボルカーが、表舞台に帰ってきました。1月にオバマ大統領が発表した新金融規制は彼の発案で「ボルカー・ルール」と呼ばれていますが、その狙いは彼の後任だったグリーンスパンの金融自由化にブレーキをかけることです。暴走したウォール街に鉄槌を加えるこのルールは、世界の金融の潮目を変えました。欧州ではギリシャをはじめとしたPIIGSの財政危機、中国ではバブル破裂を予防しようと金融引き締め……日本も影響は免れられません。
民主党政権の「後見人」稲盛和夫京セラ名誉会長。会社更生法を申請した日本航空の会長に就任しましたが、その見返りが見えてきました。京セラが主導権を握るウィルコムの経営再建で、日航と同じように企業再生支援機構から公的資金を注入するシナリオが明らかになったのです。中小企業支援が設立の趣旨なのに、それに反する二つの支援に機構内でも疑問の声が渦巻いています。支援に名乗りをあげたソフトバンクモバイルの孫正義社長の身銭を切らない皮算用も、公的資金がちょっぴりだとアテ外れに。
御手洗経団連がようやく次の「財界総理」を発表しました。本命の東芝西田、パナソニック中村が消えて目算が狂った挙げ句、“上がりポスト”にいた米倉弘昌住友化学会長が図らずも新会長に就くことになりました。国際派の米倉氏は、サウジの1兆円プラントなど経営力には定評があっても、政権交代で政治から浮きがちな経団連の前途は多難。業界2位の住友化学が事務方を務められるかどうか不安があり、米倉氏を選んだ御手洗氏と、財界主流の電力、製鉄などの老舗企業との距離も、これからは影響しそう。行く手には財界総本山の漂流が見えてきます。
本誌が独走する日銀批判の第3弾。日銀は05年の機関誌「日銀レビュー」の企画局論文で、過去の日銀の金融政策がテイラー・ルールにほぼ沿ったものであることを実証してみせた。ところがどっこい、マジックが潜んでいる。「オリジナル」と称しながら、ルールを都合良く修正し、乖離を消しているのだ。ここまで姑息な手口を使って自らを正当化しようとするのは、明らかに98年の日銀法改正によって得た独立性の悪用である。日本がデフレから脱出するには、二流の中央銀行を法改正によって立ち直らせなければ不可能だ。
米グーグルが「中国大陸から受けた」と明らかにした大規模なサイバー攻撃。真の首謀者は誰なのでしょうか。昨年末に穏健派の反体制作家、劉暁波に禁固11年の厳罰判決が出たように、中国の国内締め付けは強まるばかり。活動家たちが使うパソコンのベータ版ソフトには「トロイの木馬」が埋め込まれ、国家安全部が24時間監視しています。知識人たちが国内の検索サイトでなくグーグルを愛用する中で、グーグル・チャイナにもスパイを潜り込ませていたのでしょうか。ネット監視の公安特殊部隊が設けられ、ネット専従の検事・警官はいまや30万人。中国「ビッグブラザー」の全貌をご紹介します。
検察改革への反発から大義を失った「シナリオ捜査」、現場の暴走、マスコミへのリーク合戦。あたかも起訴の要件がそろったようなマスコミ情報を流しながら、東京地検特捜部はついに証拠を揃えることはできませんでした。そして1月31日、民主党の小沢一郎幹事長に対し2回目の事情聴取。このとき小沢氏と検察の「手打ち」が行われた……。検察は「手打ち」で何を得たのか。小沢氏との戦いはこれで本当に終わるのでしょうか。検察敗北の裏表を詳しくお伝えします。
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