2008年6月号の読みどころ
2008年05月19日発行
FACTAがスイスの調査報道記者と組んで、「広告の巨人」電通の尻尾をつかまえました。日本では1行も報じられていない完璧なスクープです。7年前倒産した電通の合弁会社で、サッカーW杯、五輪、世界陸上の放映権を独占していた代理店ISL/ISMMの暗部が、スイスのツーク刑事裁判所で始まった裁判の起訴状で明らかになりました。ISLから400万スイスフラン(約4億円)を受領した香港登記のダミー会社は、電通の現職専務が“本尊”だったのです。この専務は90年代に長銀を破綻に追い込み、2信組乱脈融資で逮捕されたイ・アイ・イ社長(故人)の実兄です。裏金の「見返り」は何だったのか。国際サッカー連盟(FIFA)を揺るがすスキャンダルの詳報は、2年前のインサイダー疑惑に続くFACTAの電通追及第二弾です。
朝日新聞創業家の村山美知子社主は、朝日新聞社株36%を所有する筆頭株主。87歳と高齢のため、相続対策は朝日経営陣の頭痛の種です。社主は法定相続人の甥を嫌って、秋山耿太郎社長に解決策を講じるよう厳命。そこで「朝日新聞文化財団」を受け皿にして株を寄託、その評価額分を朝日新聞が財団に出して、財団を事実上の持ち株会社にする案が固まり、理事陣も一新しようとしました。ところが、女社主が心変わり。新たな受け皿に名乗りを上げたのがテレビ朝日でしたが、実現すれば朝日新聞とテレビ朝日という親子の立場が逆転しかねません……。
<企業スキャン>JFEホールディングス――数土社長「独裁」に綻び
川崎製鉄とNKKが統合して5年半。「統合の優等生」と持てはやされてきたJFE内部で軋轢が高まっています。NKK出身の実力者をことごとく排除する数土(すど)文夫社長の剛腕に、川鉄出身の長老がNKK出身の長老に「あまりの独裁ぶりを謝った」と伝えられるほど。さらに問題なのは、数土氏の手腕が新日鉄を真似するだけの「二番手」経営にすぎないこと。国際感覚も鈍く、未曾有の資源高と世界規模の鉄鋼再編の嵐を乗り切れるのか、疑問の声が上がっています。
今年1月2日、原油先物が1バレル=100ドルを突破した衝撃も今は昔。ゴールドマン・サックスのレポートは原油がさらに高騰、「150~200バレル」を予測して市場を驚かせました。主犯はやはり過剰流動性にあるのではないでしょうか。サブプライム危機に端を発し、アメリカが金融緩和政策で供給したマネーは、商品市場に流れ込んでいます。米、小麦など穀物の値上げショックで途上国では深刻な食糧問題が顕在化してきました。このままでは資源・食糧発の世界インフレが起きかねず、ようやくデフレが終わった日本も安閑とはしていられません。
中国のオーバープレゼンスに対する東南アジア諸国の警戒がにわかに高まっています。この傾向は、特に中国と国境を接するASEAN後進国のラオス、ミャンマー、ベトナムなどで顕著です。中国からヒト、モノ、カネが野放図に雪崩れ込み、各地で「チャイナタウン化」の脅威を与えています。その現状を雲南省とバンコクを結ぶ「南北回廊」途上にあるラオスからルポしました。中国のオーバープレゼンスが臨界点を越えるとき、胡錦寿政権の外交哲学である「和諧世界」は完全に崩壊し、ASEAN諸国で反中・嫌中デモや反動の嵐が吹き荒れることになるでしょう。
衆院山口補選の敗北が確実になった4月27日の夜、森喜朗元首相と青木幹雄前参院議員会長が密かに福田康夫首相を訪ね、2時間半も話し込んだのは、まさに「心のケア」のためでした。よく言えば照れ性、有り体に言えば相当の天邪鬼。お坊ちゃま育ちの首相は、プライドが人一倍強く切れやすい。周囲のフォローなくして、低支持率の首相は到底もちません。いま自民党のベテラン議員が恐れるのは、福田首相がやけを起こして、突然退陣を表明しないかという悪夢です。
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