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2006年9月号の読みどころ

2006年08月20日発行

(1)企業スキャン――日本航空 ハゲタカが舞う「窮状」(p30-33)
日本航空の経営が「操縦不能」に陥っています。「新町おろし」の激しい人事抗争から半年、株主総会日後に38%も株式が希釈される公募増資を決めた取締役会決議は、「投資家や株主を欺く暴挙」として世論の集中砲火を浴びました。なぜ、無理を重ねたかは、8月7日発表の4-6月期連結業績から透けて見えます。全日空に比べあまりの惨状。それが市場に知られないうちの「駆け込み」増資だったのです。

4~6月期の日航と全日空の業績比較

しかし、その決算もお化粧だらけ。すでに実質債務超過とも言われますが、ナショナル・フラッグだけに更生法などの法的整理は、所管官庁の国土交通省も、債権者である政策投資銀行など官民金融機関も望みません。ライバル全日空も「生かさず殺さず」が本音。それをみて頭上に舞い始めたのがハゲタカです。

増資発表の当日、6%弱の株主として突如浮上した米国有力投資銀行のモルガン・スタンレー証券。すでに日航株は外資の「株の仕込み場」と化しているのです。ロンドンで発覚した旅客機テロ未遂事件で、リスク懸念が高まった世界の航空需要は、喘ぐ日航にとってまさに泣きっ面にハチ。新町敏行会長―西松遥社長体制引きずりおろしが密かに始まろうとしています。


(2)安倍は組閣でドジを踏む
永田町はいま「猟官運動」真っ盛りです。福田氏不出馬ですっかりしらけた自民党総裁選ですが、盛り上がらない政権発足となる安倍氏にとって、唯一の見せ場はサプライズ人事。しかし漏れ伝わる人事はどれも拍子抜け。政界トレンディードラマのような演出に、早くも出足から躓きそうな気配です。「安倍首相」の命運を担う党三役、閣僚、官房長官、官房副長官をはじめとした目玉人事を予測し、「勝ち馬」に乗ろうとする若手ばかりで、実力も経験も未知数の新政権がはらむ危うさを指摘します。


続いて、各分野の目玉記事です。

(3)世界景気に走った「悪寒」
8月8日、バーナンキ議長率いる米連邦準備理事会(FRB)が追加利上げを見送りました。忍び寄るインフレと景気後退の綱渡りのなかで、アメリカ景気の陰りが濃くなってきたことを示すものです。米国では住宅価格の伸びが急低下し、景気との連動が心配されています。また、成長の主役が新興国に移り、グローバリゼーションのいいとこ取りに限界が生じはじめました。そんな世界経済の乱気流に目もくれず、「いざなぎ超え」などと景気を楽観する日本企業は要注意です。


(4)「次世代ネット」の大風呂敷
既存の電話網をブロードバンド化やIP(インターネット・プロトコル)化して、まったく新しい回線網にしようという「次世代ネットワーク」(NGN)が、NTTの公開実験によってその輪郭を見せようとしています。ところが、総務省からは「NGN開放の義務付け」などの牽制球が飛んできます。他キャリアが「後出しジャンケン」で出方をうかがうなかで、NTTは何を狙っているのでしょうか。インターネットの「利権」を牛耳ってきた村井純慶応大学教授のグループとの間で火花を散らしていますが…。


(5)中国「土幣」経済の歪み
再び経済が過熱し始めた中国で、元凶として土地問題が注目されています。土地はすべて国有地の中国では、地方政府が農民からタダ同然に農地を収用、それを工業用地や商用地に転用して、その利用権を担保にした融資を引き出すというメカニズムになっています。これは土地供給が貨幣発行に似た役割を果たす「土幣」経済と言ってもいいでしょう。こうした特異な制度が、土地を立ち退かせられる農民の社会問題を引き起こし、地方政府の開発熱を煽っている現状を中国の代表的なシンクタンク、北京大学中国経済研究センター(CCER)の周其仁教授が分析した特別寄稿です。

8月18日付の朝日新聞が、経済面で「中国官製バブル」という見出しでこの問題を報じています。筆者の吉岡桂子記者がルポしたのは、内モンゴル自治区の区都フフホトで起きた不思議な“草原バブル”ですが、これは弊誌が前号の「中国『土地バブル』退治に用心逮捕」で報じています。周論文でメカニズムが鮮明に分かると思います。


(6)アメリカvsイラン「代理戦争」
レバノンのヒズボラ対イスラエルの“戦争”は国連決議案を受けて、ひとまず停戦にこぎつけました。しかしワシントンでは、一時鳴りを静めていたウィリアム・クリストル以下、ネオコンの論客が勇ましく息を吹き返してきました。今回の戦争がイランとシリアを叩く格好の材料をもたらしたからです。しかも、地下に網の目のように陣地を構築し、イスラエル国防軍の空爆に耐えたヒズボラの戦闘力は、ペンタゴンを愕然とさせました。ヒズボラの民兵が侮れないということは、彼らを訓練したイランも侮れないということです。ワシントンでは強硬論が高まり、紛争は事実上、アメリカ対イランの代理戦争と化しています。


(7)水谷建設「汚れ役」の半落ち
「水谷さん、あんた、今まで大変だったでしょ。みんな、あんたに汚れ仕事をさせて」。東京地検特捜部の検事に取調室でそういたわりの言葉をかけられた水谷建設の水谷功元会長は、声をつまらせ、裏金を運んだ人物の固有名詞をすらすら供述しています。しかし日時、場所などは二転三転。原発やダムなど大規模土木現場におけるこの「前さばき」のプロは、政界への食い込みで零細業者を年間売上高450億円規模に育て上げました。日本の暗部でひたすら汚れ役を引き受けてきた彼の過去から、検察の今後の矛先が浮かんできます。その福島原発疑惑に絡んで、東電首脳の意味深発言も注目です。


9月号のフリー・コンテンツは以下の7本です。8月28~9月5日にかけて、順次アップしていきますので、ぜひお読みください。

8月28日掲載
★イオンがローソンを買収か 岡田ジュニア新浪氏に打診?
合併・統合に向けた水面下の動きがコンビニ業界で進む中、ローソンとミニストップの合併説が浮上しています。

8月29日掲載
★産経のエースが「セレブな紙媒体」創刊へ
産経新聞が10月にも新しい新聞を発行する計画を立てています。創刊プロジェクトのトップは将来の社長候補の1人、平田篤州氏です。

8月30日掲載
★ケータイクレジットに致命的な弱点
各社のケータイクレジットサービスが乱立していますが、全加盟店の決済端末が即死しかねない、致命的なセキュリティ上の弱点を抱えているのはご存知でしょうか。アキレス腱は、これらに使われているソニー開発の非接触ICチップ「フェリカ」にあります。「フェリカ」の弱点と各社の思惑を分析します。

8月31日掲載
★振興銀行に業務改善命令 金融庁とやりあう木村剛
日本振興銀行に対する金融庁の行政処分が秒読み段階に入りました。来春は銀行存続をかけて当局と戦闘意欲満々の木村剛氏が攻防を展開しそうです。

9月1日掲載
★ホームセンターの「ドイト」 売り上げ減で火の車 競争が激化するホームセンター市場で、その草分け的存在であるドイトが苦境に立たされています。

9月4日掲載
★共同通信がヤフーに逆襲
ニュースを転載し制作はしないヤフーに対して、「もう甘い汁は吸わせない」と逆襲の動きが出てきました。共同通信が全国の地方紙を連合して「日本一のニュースサイト」を作るプロジェクトです。

9月5日掲載
★阪急・阪神統合の「立役者」 佐山展生教授が荒稼ぎ 教授、コメンテーター、コンサルタントの3つの顔を持ち、華麗な経歴を持つ佐山展生氏は阪急・阪神統合の「立役者」としても知られた存在ですが、関西では彼についての悪い噂が飛び交っています。阪急HDから受け取る成功報酬が30億円というのは本当か、M&Aのアドバイザーがテレビ出演して良いのか、一橋大の看板を利用しているのでは、といった本誌の取材に佐山氏本人が答えました。