『古典に学ぶ現代世界』著者/滝田洋一 評者/渡辺博史
2025年8月号 連載 [BOOK Review]
出版社には申し訳ないが、この本は「読者を選ぶ」。そのくらいに優れた、かつ重い内容の書籍である。『動物農場』に始まり『大暴落1929』に至るまでの幅広い分野から34冊の古典が選ばれているが、それぞれのところで更に他の文献が付加され、全体として100冊を超える名著を、現下の出来事との関連に着目しつつ紹介している。ボーン・上田記念国際記者賞を受賞された著者の国際的な視野の広さ、取材力、構想力の高さは言うまでもないが、日々世界で生起する様々な事象を自らの脳中にある無数の古典の中の名句と結び合わせることが出来るという卓抜した能力が、この本の骨格をなしている。字数制約のある文章の世界で永年磨かれて来た成果とも思われる簡潔かつ流ちょうな文章の流れは、それぞれの古典の示す論点に速やかに誘ってくれるかと思わせる。しかし、それは大きな誤解で、一部を除いて余計な注釈 ………
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