「お仏壇のはせがわ」の雄飛

長谷川 裕一(日本ニュービジネス協議会連合会 新会長)

2008年9月号 連載 [CHALLENGER]
by W

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「おててのしわとしわをあわせてしあわせ。ナーム」

テレビコマーシャルでお馴染みの「お仏壇のはせがわ」の創業者、長谷川裕一氏(67)が6月、日本ニュービジネス協議会連合会(JNB)の会長に就任した。JNBは日本経団連、経済同友会、日本商工会議所に次ぐ第4の経済団体。全国の中小、ベンチャー企業約3千社が加盟している。これまで関本忠弘氏(NEC元会長、故人)、樋口廣太郎氏(アサヒビール元会長)ら名だたる大企業のトップが会長を務めてきたが、前任の志太勤氏(シダックス会長)が白羽の矢を立てたのは長谷川氏だった。

異例の抜擢だった。はせがわは宗教産業界で初の株式上場(88年福岡証券取引所、94年に大阪証券取引所)を果たし、全国に115の直営店を構えるリーディングカンパニーだが、連結売上高は約220億円にすぎない。仏壇業界のイメージは湿っぽく、本社が福岡市にあることもハンディと見られたが、長谷川氏にはそれを跳ね返すパワーがあった。

京都の龍谷大学仏教学科を卒業した長谷川氏は故郷の福岡県直方市に戻り、生家の仏壇店を継いだ。29歳の時にアメリカ西海岸のチェーンストア事情を視察して「目が覚めた」と言う。当時、専門家から「無理だ」と一蹴されたが、仏壇販売事業のチェーンストア化に挑戦し、15年後に売上げ日本一を達成した。

学生時代に「日本一の仏壇屋になる」と志を立て、「10年後には上場する。必ずできる」という固い信念を持っていた。著書に「無理と言われてもあきらめない。自分がパイオニアになればいい」と書く、根っからのベンチャー経営者なのである。

長谷川氏は、はせがわの経営理念をこう語る。「お仏壇は家庭における日本文化の原点である。文化とは、その国のその国民によって血と汗と涙によって長い年月をかけて築き上げられた先祖の遺産である。日本の心を大事にし日本の心を育て、我々の先達が成し遂げたように、さらに新しい日本の心を作り出してその輪を全世界にまで広げて行かなければならない」。何とも熱い国家観の持ち主なのである。

トレードマークは剃髪と人懐っこい笑顔。22歳の時に日本青年会議所に入り、そこで、今を時めく自民党幹事長、麻生太郎氏と知り合う。麻生氏はお隣の飯塚市出身で年齢も同じだ。78年に麻生氏が青年会議所会頭に立候補した時「選対本部長」を務め、後に自らも副会頭に就いた。

九州財界のホープとなった長谷川氏は86年に福岡に企業基盤を持つ若手経営者と文化人の集まり「博多21の会」を旗揚げし、同年「九州島創造」への情熱と志を同じくする若手経済人の集まり「九州経済フォーラム」の仕掛け人となった。「抜群のオーガナイザー」と九州財界関係者は口を揃える。JNBの傘下団体である九州ニュービジネス協議会の設立(87年)の際も、長谷川氏が中心的な役割を果たした。

ここ数年はJNB副会長として、JNBの社団法人化などで汗をかき、志太前会長の懐刀として活躍してきた。近年、JNBは政策提言機能を強め、全国42都道府県に拠点を設けるなど組織拡大に成功したが、その一方でメンバー企業経営者の高齢化や財務基盤の問題を抱えている。

会長就任後、長谷川氏は各地のニュービジネス協議会に挨拶に出向き、メンバー企業の要望、意見に耳を傾けてきた。「とにかく元気で楽しいJNBにしたい」「東京依存から脱却して地方から経済を再生させたい」と、抱負を語る。ユニークな熱血漢の率いるJNBが、どんな新機軸を打ち出すか楽しみだ。

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