編集後記「某月風紋」

2017年7月号 連載

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「原子力のリーディングカンパニー」を目指すと、気概を見せた関西電力の岩根茂樹社長 (6月7日、原子力規制委員会、撮影/本誌 宮嶋巌)

原子力規制委員会の田中俊一委員長(左)と更田豊志次期委員長 (右)

再稼働した高浜原発3、4号機(撮影/本誌 宮嶋巌)

関西電力は高浜4号機に続き、6月6日に高浜3号機を再稼働させた。翌7日、原子力規制委員会に呼び出された岩根茂樹社長は「原子力発電におけるリーディングカンパニーをめざす」と明言。「資源のない日本において、原子力は長期的に必要不可欠なエネルギー。従来の東電に倣(なら)って関電が先頭に立ち、課題や問題があれば前に出て、他社を牽引していく」と臆することなく語った。規制委の「お白州」で、かかる気概を露わにした電力会社のトップを知らない。

これまでに規制委に安全審査を求めて合格したサイトは26基中12基。いずれもPWR(加圧水型)で、東電や中部電力が申請したBWR(沸騰水型)は一つも合格していない。一方、関電が申請した7基は全部合格済み。この秋には大飯3、4号機も再稼働する。関電が再稼働を急ぐ7基に投ずる安全対策費は総額8300億円と途方もないが、高浜3、4号機の再稼働で年840億円、さらに大飯3、4号機が動き出せば年1200億円の利益が見込めるため、「経済合理性に叶う」(関電役員)。

もともと原発依存度が高かった関電は、3・11後の全原発停止が続くと、火力発電の燃料費がのしかかり、2度の値上げを経て電気料金が高止まりした。結果、関西エリアは電力小売り自由化の「草刈り場」となり、全体の8%、約78万世帯の契約を新電力に奪われた。さらに、販売電力量が初めて中部電力を下回り、3位転落の屈辱を舐めた。「再稼働が切り札。電気料金を下げ、反転攻勢に出る」と言い続ける岩根社長は、現有9基再稼働の臍(ほぞ)を固め、東電の後を継ぐリーディングカンパニー宣言を出したのだろう。

通巻135号の今号より阿部が主筆、宮嶋が発行人、宮﨑が編集人の新体制です。初心を忘れず、読者の皆様が「知りたいこと」「本当のこと」を書き続けます。ご期待ください。(宮嶋)

   

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