甘利が完全復活「日米交渉担当相」で入閣も

2017年7月号 POLITICS

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降ってわいた国難に駆け付けた「憂国の士」か、なし崩しに復権を目論む「火事場泥棒」か――。今夏にも行われる内閣改造をめぐり、甘利明・前経済再生担当相の去就が注目を集めている。トランプ米政権がごり押しを狙う日米間の貿易交渉の担当相就任をにらみ、再入閣するとの観測が強まっているためだ。甘利と言えば、昨年1月に建設会社からの金銭授受問題で涙ながらに閣僚辞任したことはまだ記憶に新しい。早々の再登板が取り沙汰されるのは、適材を欠く安倍政権の台所事情を示す証左でもある。

「甘利は復活した」。日米経済対話の経緯に触れる立場の与党幹部は言い切る。環太平洋経済連携協定(TPP)担当相を兼任し脚光を浴びていた日々から一転、しばらく隠遁生活を送った後、昨年秋に自民党税調インナーへひっそり復帰。党税調を完全に影響下に置きたい首相官邸による、将来的な税調会長起用も見据えた布石人事とみられたが、往時の華々しさとは性質を異にする職人的役割に存在感も埋もれがちだった。

そんな甘利に「日照りの雨」となったのは、米国第一主義を掲げるトランプ政権の発足だ。TPPからの米国脱退に続き、日米自由貿易協定(FTA)を視野に入れた経済対話の発足。大統領選前は想定を避け続けていた事態が現実のものとなる中、日本側は急ごしらえで麻生財務相をトップにした交渉チームを編成。ここで陰に陽に麻生へのアドバイザー役を果たしたのが、TPP交渉の内幕を知り尽くす甘利だった。

折しも2月、甘利は麻生派「為公会」に入会、名実ともに麻生を支える立場となった。第2次安倍政権発足後から権力の中枢を占めた安倍首相、麻生、甘利、菅官房長官のカルテットも、甘利の失脚後に消費増税再延期や衆院解散時期をめぐり、麻生と菅の違いが鮮明化。麻生にとってこの時期の甘利との接近は、対米交渉の助言にとどまらず、政権内の微妙な力学に一石を投じるファクターとなっていた。

麻生とペンス米副大統領による4月の経済対話では、2国間の貿易協議開始で合意。米側が今後、農産物・自動車をターゲットに市場開放を迫ってくるのはほぼ確実だ。このため、政府内では農水・経産分野を横断した特命担当相設置が検討されている。一方で政府は米抜きの「TPP11」を堅持し、日米協議に既存のTPP合意内容を反映させる戦略を描く。貿易協議での米側トップの対日強硬派・ライトハイザーUSTR代表と渡り合いつつ、TPP11の結束を主導していく難役に甘利の名前が挙がるのは、一連の経緯を踏まえれば「ある意味当然」(経済官庁幹部)と言える。

実務能力の面で他に名前が挙がるのは林芳正、茂木敏充の両氏だが、林は地元・山口での因縁から安倍との関係が微妙。茂木はパワハラまがいの逸話に事欠かず、著しく人望に欠ける。消去法でも甘利の名前が残るというわけだ。

ただ、甘利の金銭授受問題は元秘書を含め不起訴となったが「あれが無理ならあっせん利得処罰法の立件は不可能」(警察関係者)との疑問が燻る。森友・加計学園問題や首相側近ジャーナリストの醜聞が相次ぐ中、甘利入閣説には安倍政権から生じ始めた「権力の腐臭」と似た匂いも漂う。(敬称略)

   

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