脱毛サロン「キレイモ」の綱渡り経営

2017年7月号 BUSINESS

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肌の露出が増える夏本番を前に、若い女性が気になるのはムダ毛の処理。そんな女性たちの「もっとキレイに」との思いに応え、成長してきたのが脱毛サロン業界だ。電車の中吊りを見ても、春先から脱毛サロン関連の広告が増えているのにお気づきの方も多いだろう。

数あるサロンの中で、「次に危ない脱毛サロン」と取り沙汰されているのが、「キレイモ」を展開する「ヴィエリス」(港区六本木)だ。脱毛サロン業界ではここ数年、同業者の破綻が続いており、「ミュゼプラチナム」を展開していた「ジンコーポレーション」(渋谷区広尾)は16年春、事業再生ADRを申請。「エターナルラビリンス」経営の「グロワール・ブリエ東京」(港区北青山)は今年3月末、自己破産申請に追い込まれた。

脱毛サロン「キレイモ」は、人気アイドルグループ・AKB48の元メンバー板野友美氏を広告塔として、低料金と一定の知名度を武器に、北海道から沖縄まで全国の主要都市に47店舗を展開中(17年4月時点)。

競合が激しい中でキレイモが掲げたのが、利用者が抱く既存サロンに対する不満や不安の解消だ。「勧誘をしない」「予約がとりやすい」「追加料金を取らない」などの方針で集客に努め、エステ事業開始から3年あまりで業容を急拡大させてきた。

しかし内情は「綱渡りの資金繰りが続いているようだ」(業界関係者)。銀行からの借り入れがないヴィエリスにとって、資金繰りの原資となるのは利用者からの前受金である。現状は業容拡大に伴い前受金が急増しているからいいものの、ひとたび成長が鈍化し、利用者の解約・返金要請が相次げば、急速に資金繰りが悪化するリスクをはらむ。こうした問題は、前述した脱毛サロンの破綻パターンに酷似している。

業績数値を公表していないため詳細は不明だが、過去の累損などから16年10月期時点で数十億円の大幅債務超過状態と見られる。この金額を上回る契約受注を確保はしているようだが、前受金依存の資金操作や財務面の不透明さは拭えない。急拡大に伴う資金負担が増すなかで、最近は積極的にテレビCMを流すなど相応の広告宣伝費も発生しており、「先行きを懸念し、取引条件の見直しを検討する取引先も出てきている」(同)。

代表・吉福優氏の経歴も興味深い。映画・アプリ制作の「ThanksLab」の取締役を務めていたが、同社は14年6月に破産。倒産前に不正なリース取引への関与が噂されていたうえ、一時期ではあるが同社の親会社は、粉飾決算で株価操縦を行っていた元JASDAQ上場の「石山Gateway Holdings」(16年7月破産)だった。

一方、最近、脱毛サロン業界で存在感を高めているのが、東証2部上場の「RVH」だ。破綻したサロンを相次いで傘下に収め、今年2月にはエステ大手「たかの友梨ビューティクリニック」の運営会社を子会社化。システム開発会社だったRVHは、この2年あまりで脱毛サロン大手に変貌している。

いま業界内で噂されるのが「キレイモのRVH傘下入り」。書き入れ時の夏場以降に失速したキレイモを、RVHが支援するというシナリオだ。またしても得をするのはRVH、割を食うのは前払金を失う利用者となってしまうのだろうか。

   

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