仏仮設大手「GLイベンツ」が五輪狙い日本上陸

2017年6月号 BUSINESS
by 千葉利宏(ジャーナリスト)

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2019年9月のラグビーワールドカップ(WC)日本大会、20年7月の東京オリンピック・パラリンピックの施設整備の鍵を握るフランス企業が日本に上陸する。仮設施設の建設工事では世界最大手のGLイベンツ社だ。その実力は12年のロンドン五輪、16年のリオデジャネイロ五輪でも証明済み。膨れ上がる競技会場整備費を削減する切り札になるか。

4月25日、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、39競技会場のうち一部を除く35会場の仮設工事について基本設計委託業務の入札募集を一斉に開始した。昨年12月に公表された大会経費の合計額は1兆6千億~1兆8千億円と膨大だ。うち会場関係は恒久施設(恒設)3500億円、仮設等2800億円、エネルギーインフラ500億円の計6800億円と、予算全体の約4割を占める。組織委員会の負担は仮設800億円で、5月26日以降に委託先を決定し、9カ月間の「基本設計の中でさらなるコスト削減を図る」(広報担当)考えだ。

日本で仮設といえば、鉄パイプを専用金具で組み立ててテントを張った程度の簡易的な建設物をイメージする人がほとんどだろう。建設コストは恒設の5分の1~10分の1以下だが耐用年数は長くて2年。そのため前回の1964年東京五輪以降、98年の長野五輪、02年のサッカーWCといったビッグイベントのたびに、コストの高い恒設の巨大施設がつくられてきた。

しかし、世界では00年以降、ビッグイベントの施設整備は仮設が主流となっている。コストと耐用年数に応じさまざまなレベルで仮設をつくる技術と専用資材が開発されており、短工期・低コストの上、資材は世界規模で再利用する。イベント終了後は適正な規模に解体・縮小でき、施設の維持管理費で赤字を垂れ流す問題も解消できる。

GLイベンツ社は、世界各国のビッグイベントの仮設整備で数多くの実績を持ち、リオ五輪では仮設工事の6割を手がけた。2年前から日本での活動準備を始め、日本法人のGLイベンツ・ジャパン(ロベール・ヴェルディエ取締役支社長)を設立。埼玉スタジアム2002などの実績のある大手設計事務所、梓設計(杉谷文彦社長)と業務提携し、従来型仮設と区別するためにセミパーマネント(半恒設)方式と名付けて日本の建築法規などへの対応を進めてきた。2年後に迫ったラグビーWCでは国内12競技会場のうち少なくとも5施設でスタンドの増設工事が必要になるが、同社は恒設に近い品質のスタンドを恒設の半分のコストと3カ月程度の工期で設置できるという。

ヴェルディエ氏は元ラグビー選手。その後金融業界で活躍、国家功労章シュヴァリエ受勲の際は会場に森喜朗元首相も駆けつけた。世界的スポーツイベントの主催国が運営ノウハウに疎いのは常。同氏は東京五輪についても、「東京都は追加見直しを進めているが、恒設にする必要のない競技施設はまだあるだろう。一方、世界中から訪れる選手団や観客のための施設は足りないのでは」と指摘する。

最近の五輪では各国要人やスポンサー、応援サポーターのための施設なども必要とされるが、当初計画には入っていない。リオに続き東京でも、狙い通り商機をさらいそうだ。

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千葉利宏

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