「ストリーム株価操縦」3人組が本星

仕手戦は創業者の持ち株も使い複数の手口で展開されたが、捉えどころがなく、まさに魑魅魍魎。

2017年6月号 BUSINESS

  • はてなブックマークに追加

ストリーム株をめぐる相場操縦事件の捜査が大詰めを迎えている。証券取引等監視委員会と警視庁による家宅捜索が行われたのは昨年10月のこと。同年暮れにカギを握る人物が病死し、一時は立件が危ぶまれていた。

仕手戦はストリームの創業者である劉海涛社長の持ち株も使い複数の手口で展開された模様だが、中心にいたとされるのは3人。大分県でタクシー会社を経営していたこともある松浦正親氏と山一證券出身の佐戸康高氏、それにかつて政治団体「法曹政治連盟」に出入りしていた四方啓二氏である。“フィクサー”の異名もとる朝堂院大覚氏(本名・松浦良右)の子息、松浦大助氏に連なるグループとかねてから目されてきた面々だ。

関係者の周辺ではこれまでも不穏な動きが取り沙汰されてきた。和牛預託商法で一般投資家から巨額の出資金を集め2011年に破綻した安愚楽牧場や、官公庁案件を相次ぎ獲得しながら昨年4月に破産した新電力事業者の日本ロジテック協同組合が代表例。ベストセラー『住友銀行秘史』を書いた元楽天副社長の國重惇史氏が昨年末まで社長を務めていたリミックスポイントも関係先と噂される。

「興正寺」から68億円流出

実際のところ、グループと言われるほどには関係者間の横のつながりは密接でないようだが、その分、人脈の広がりは捉えどころがなく、まさに魑魅魍魎。例えば、四方氏の人脈を辿っていくと、キナ臭い動きがほかにもごろごろ出てくる。

東京・銀座の雑居ビルに「TEOS」なる特定非営利活動法人(NPO法人)が存在する。設立は07年12月。ホームページを見ると、理事長や副理事長には東京都庁や東京国税局のOBの名前がずらりと並ぶ。直近の事業報告書によれば、年間の経常収益は6千万円ほど。中小企業向けの相談・セミナー事業のほか生活困窮者向けの支援活動も行っているらしい。じつは四方氏はこのNPO法人で事務局長の肩書を有している。

TEOSが注目されるきっかけは、とある寺院をめぐる騒動だった。明らかになったのは昨年8月のこと。舞台は名古屋市にある高野山系の興正寺。もともと本山と前住職(14年1月に罷免)が対立していたところ、税務調査の過程で不透明な巨額資金流出が浮かび上がった。興正寺は12年3月に隣接する中京大学に土地を約139億円で売却していたが、そのうち約68億円が本山の知らないまま業務委託料などの名目で外部に支出されていたのである。

支出先のうち約42億円は「日本開発研究所」、約5億円は「regeneration」なる現在は活動実態さえ定かでない都内の会社だったが、いずれもTEOSと関係が深い。前者の代表取締役である澤邊博文氏はTEOSの専務理事であり、後者の代表取締役である北島晃治氏も10年前にTEOSの職員になった経歴がある。そもそもTEOSは日本開発研究所が名古屋市内に持っていたビルの中に中部支部を置いていた。

TEOS関係者である三氏がともに関わった元上場会社がある。不動産現物出資を悪用した水増し増資を行うなど乱脈経営の挙げ句、15年12月に東証2部を上場廃止となったエル・シー・エーホールディングス(以下、LCA)がそれである。四方氏が同社に食い込んだのは08年夏のこと。つないだのは英会話大手NOVAの破綻間際に暗躍していた金融ブローカーだった。さらに09年2月には澤邊氏が執行役員として入り込んだ(後に取締役となり12年8月に退任)。上場廃止後の16年1月に社長となったのは北島氏である。

当時、LCAの代表取締役を務めていたのは大阪で不動産会社「都市綜研インベストファンド」などを経営する柳瀬公孝氏(本名・健一)だった。その頃、都市綜研は不動産特定共同事業の仕組みを使った投資商品「みんなで大家さん」を始めていた。柳瀬氏は09年5月頃にLCAから事実上離れることになるが、結局、30億円超の損失を負ったとされる。それとの関係は不明だが、その後、件の投資商品の販売部隊「みんなで大家さん販売」の株の大半は柳瀬氏の手元から日本開発研究所に移った。

都市綜研は過去に2度も業務停止処分を受け、一部商品は元本償還が遅延しているとの情報もあるが、それでも出資金集めは盛んだ。最近の目玉商品は三重県内のテーマパーク「伊勢・安土桃山文化村」(旧伊勢戦国時代村)や、種子島で巨大開発プロジェクトを進めるという「種子島商事」なる会社に賃貸予定の物件を対象不動産とするものだが、どうにもキナ臭い。

というのも、いずれも関わっているのが、シルバー精工の末期に入り込んだ面々だからだ。同社もまた手形乱発など無軌道の限りを尽くし11年1月に東証1部を上場廃止となった会社。東京・六本木にある種子島商事の登記簿を見ると、数年前に鹿児島県南大隅町を揺るがした核ゴミ処分場疑惑で取り沙汰された人物の名前まで載っているから、この世は不可思議だ。

モアアンドモア倒産の黒幕

他方、前出のTEOSは別のけもの道にも続いている。専務理事の澤邊氏や職員経験のある北島氏が過去、相次ぎ代表取締役を務めた会社に「新日本技建」なる不動産会社がある。同社の現在の代表取締役は一部でちょっとした話題になった倒産劇と深い関係がある。

本誌既報の通り、今年3月、予備校会社「モアアンドモア」が民事再生を申し立て経営破綻している。同社は予備校大手ナガセが展開する「東進衛星予備校」の大手フランチャイジーだったが、それ以上に興味深い点があった。創業社長の柏木秀信氏は29年前に詐欺事件で逮捕された過去があり、それ以前の野村證券時代に短期間ではあるがナガセの永瀬昭幸社長と先輩後輩の関係にあったのである。

倒産劇自体にもじつに不可解な点があった。それまでモアアンドモアは16年12月期の負債を20億円としていたが、隠れ債務の発覚で修正後は2倍近い38億円に膨らんだのである。その隠れ債務の債権者の1社こそが新日本技建の現代表が別に経営する会社だった。その会社は柏木氏が持つモアアンドモア株すべてに譲渡担保権を設定しており、まさに倒産の黒幕だ。

これら目眩がしそうな話の数々は魑魅魍魎が蠢く世界のまだまだ一端。次なる事件が表面化す日も遠くないだろう。 

   

  • はてなブックマークに追加