「スクープ」再掲/株価19%安!/「エネチェンジ」決算不能/エリート社長の「破廉恥」/2024年5月号より

産業革新投資機構系ファンドを割当先に40億円の増資をしたばかり。甚大な被害を及ぼす恐れも。

2024年7月号 BUSINESS

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城口洋平社長(同社HPより)

東証グロース上場のENECHANGE(エネチェンジ)が決算不能の異常事態だ。

不祥事発覚は株主総会の前日。そのリリースによれば、あずさ監査法人によって古典的とも言える連結外しが見つかったのが事の発端だった。その影響額は売上高で約22億円、経常損益で約9億円のマイナス。2月上旬公表の2023年12月期決算は売上高約66億円、経常損失約12億円だったから、実態はもっとボロボロだったわけだ。

エネチェンジは灘中・灘高から東京大学法学部を経て英ケンブリッジ大学工学部に学んだ城口洋平氏(36)が現地で13年に設立した「ケンブリッジ・エナジー・データ・ラボ」が前身。スマートメーターのデータ解析事業が当初の目的だった。その後、城口氏は15年、東京にエネチェンジを設立、ケンブリッジ社の事業を移した。料金比較サイト運営で電力・ガス会社から報酬を得る事業が成長、同社は20年12月に上場を果たした。

そんな中、今回の会計不祥事は、新たに乗り出したEV充電インフラ事業で起きた。全国各地で事業パートナーを募り、充電設備を販売・整備して運営支援も請け負うことで収益を上げようとの計画だ。これまでの公表決算によれば、昨年後半から収益寄与が本格化、半年間で売り上げ23億円、部門利益1億円を稼いだはずだった。

が、そこではどうやら収益水増しが行われていたらしい。同社は設備を「EV充電インフラ1号」なる合同会社にまずは販売、事業パートナーはそこの社債を引き受けて資金拠出し収益分配を受ける形だったようだ。が、社債は一定期間後に出資持ち分へと転換され、損失発生時はエネチェンジに買い取り請求できる権利が付与されていた。

要は、たとえ高値で充電設備を売ったとしても、その分の損失リスクが将来跳ね返ってくるわけだ。合同会社は一時的に収益計上するためのダミー会社みたいなものであり、監査法人によりわずか半年でそれが見抜かれてしまったのである。

その証拠に、公表済みの貸借対照表を見ると、この半年で「売掛金及び契約資産」は5億円強から20億円弱に急増していた。水増し計上の大半が資金移動すら伴わない単なる名義変更だけだった可能性は高い。エネチェンジは今年1月15日に「2号」合同会社も設立していたから、この安直な水増しをさらに手広く行おうとしていたようだ。

どこからどう見てもピカピカの学歴である城口氏だが、じつは過去にも不祥事を起こしている。東大在学中の09年、同氏は東京工業大学の支援を受け大学発ベンチャー「ミログ」を起業、ジャフコやリクルートからの出資も得た。が、同社が手掛けるスマホアプリが利用者の知らないところで個人情報を抜き取っていたことで問題化。ミログは12年4月に解散に追い込まれた。

その後、城口氏は渡英し、約1年後にケンブリッジ社を起業したわけだが、同社は14年3月、「エナジー・プラン・カンパニー」なる香港法人の傘下に入る。東証スタンダード上場で給排水設備を手掛けるエプコの岩崎辰之CEOの個人会社だ。この強力な金主を得て、城口氏は復活を叶えたということらしい。

エネチェンジは2月、産業革新投資機構系ファンドを割当先に40億円の増資を実施したばかり。再びの不祥事は前回より甚大な被害を及ぼす恐れもある。

   

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