2023年2月号 連載 [コラム:「某月風紋」]
2022年の米国株は惨憺たる成績だった。代表的銘柄を集めたS&P500種株価指数は年間で19%下落。ハイテク株中心のナスダック総合指数に至っては33%も下げた。リーマン・ショックがあった08年以来だ。
コロナバブルがはじけただけにも見えるが、物価上昇を抑えるためFRB(連邦準備理事会)が急ピッチで利上げを進めたことが大きく影響した。金利が上がれば景気にはマイナスだからだ。コロナ禍で上昇したGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)やテスラの株で儲けてFIRE(経済的自立と早期退職)したものの、あきらめて再び職に就いた人も多かったらしい。
そして2023年。米国では景気後退が懸念されている。FOMC(米連邦公開市場委員会)参加者の見通しでも、GDPの実質成長率は0.5%まで減速する。なのに最近の株価は底堅い。雇用などで弱い指標が公表されると、利上げが終了し年内にもFRBが利下げに転じるとの期待が膨らむ。だが、パウエル議長以下理事たちは、早期の利下げを重ねて否定している。そのたびに株価は調整するのだが、しばらくするとまた持ち直す。人は自分が望む情報に引っ張られ、信じてしまうのだろう。
ひるがえって日本。昨年末に日銀が突然、事実上の利上げに踏み切った。長期金利は0.5%に到達し、為替レートは円高に大きく振れた。個人向け国債の利率も0.33%まで上昇した。とはいえ消費者物価は4%も上がっているから、年金生活者には焼け石に水。実質賃金が8年半ぶりの下落幅となり現役世代の不満も高まっているはずだ。日銀の対応は遅すぎたと言わざるを得ない。
相対的に堅調だった日本の株価はどうなるか。日銀が本格的な利上げに踏み切れば株価には下押し圧力がかかる。個人的には買い場と見ているが、自信があるわけではない。
(ガルテナー)