連載コラム:「某月風紋」

2021年11月号 連載 [コラム:「某月風紋」]

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枝野が今やるべきことは?(撮影/堀田喬)

英国の元首相である、トニー・ブレアが1994年労働党党首に就任したのは41歳。97年の総選挙で、労働党は18年ぶりの政権復帰を果たした。

ブレアの前に立ちはだかったのは、12年近く首相の座にあった、保守党のサッチャーの「新自由主義」。国営企業を民営化し、労働組合に対する規制を強めた。前任の労働党政権は、労働組合が過激なストなどによって引き起こした混乱を収拾できなかった。

新首相に就任した岸田文雄は10月8日の「所信表明演説」において、「私が目指すのは、新しい資本主義の実現です」「新自由主義的な政策については、富めるものと、富まざるものとの深刻な分断を生んだ」と述べた。

『岸田ビジョン』(岸田文雄著)は、「新しい資本主義」について「渋沢栄一翁は『合本主義』を唱え……『資本』と『労働』、すなわち『カネ』と『ヒト』、資本主義の二大要素ですが、よりヒトを重視した、人間中心の資本主義を目指していかなければなりません」と説く。

ブレアはサッチャーの「新自由主義」を完全に否定しなかった。「1918年の綱領から社会主義を抑制し、漸進的な改革主義に転換するこころみであった」(『赤いバラは散らない』谷藤悦史著)。それは「第三の道」と呼ばれた。

自民党は「疑似政権交代」によって、「新自由主義」の是正に動き出したのではないか。富者と貧者の格差が拡大していることに、国民は耐え切れない。

立憲民主党は、総選挙にあたって、枝野(幸男)党首自ら「枝野総理」を喧伝している。

ブレアは、「影の内閣」の閣僚として着実に政策を学んでいた。83年初当選、88年エネルギー担当相、その後も雇用担当相、内務相を経験。枝野が今やるべきは、若手の政治家の育成だろう。民主党が政権から転落してから9年。英労働党の政権復帰の日々の半分に過ぎない。

(河舟遊)

   

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