2021年9月号 連載
新宿区内の繁華街で妻と二人三脚で居酒屋を経営して25年。従業員5人の小規模店だが、昨年来のコロナ禍でも常連客の支えもあり、1人も欠けずに踏ん張り続けた。ただ3度目の緊急事態宣言で時短営業に酒類の提供禁止が加わり、いよいよ限界を感じた。
4月末から一旦休業し、給与は国の雇用調整助成金でしのいだ。ただ飲食業以外は日常を取り戻し、国は東京五輪の成功しか考えていない。その一方で従業員は不安を抱え、家庭だけでは満たされない「居場所」を必要としていることも改めて知った。雇調金は打ち切られ赤字必至を覚悟の上、6月から酒なしで営業再開に踏み切った。
近隣でも酒を提供する店が露骨に増え、来客ゼロの日もあった。そんなときウーロン茶片手に、私や従業員の話に耳を傾けてくれたのが編集部の皆さん。現場の理不尽を知るFACTAにこそ「正直者がバカを見る」世の中をひっくり返してほしい。今月からまた休業に入るが、従業員の居場所だけは守り続ける。
東京・新宿区内の飲食店経営者