ファンケル社長 島田 和幸氏に聞く!(聞き手/編集長 宮嶋巌)

「未来を起点に!」を社員共通の価値観に

2021年7月号 BUSINESS [トップに聞く!]

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1955年広島県生まれ。同志社大学法学部卒業。ダイエー入社。故中内㓛氏の秘書を長く務める。2003年ファンケルに転じ、07年取締役、11年常務、15年専務を経て17年より現職。

――年間売上高は前期比9.4%減の1150億円でした。

島田 「化粧品」と「健康食品」が主力の当社は「インバウンド銘柄」と持て囃され、売上高に占めるインバウンドの割合が15%を超えていました。その需要が消滅したうえ、昨年5月は直営店舗が全休となり、さすがに気持ちが落ち込みました。

――それでも前期の営業利益は115億円と健闘しました。

島田 店舗会員アプリ(登録約66万人)をフル活用して3分の2程度を通販に移行し、店舗の再開を待ちかねたお客様が沢山ご来店になり、「マルチチャネル」の強みを発揮できました。

――最も危惧されたことは?

島田「全店休業」や「リモートワーク」を強いられた社員のモチベーションが落ちていないかとても心配でした。当社は毎年アルバイトを含む全社員約3千人に経営アンケート調査を行っています。満額のボーナスを出せなかったのに社員の9割から「当社の将来に期待が持てる」「当社で働いていることを誇りに思う」という回答が寄せられ、社員エンゲージメントの高さに目頭が熱くなりました。

――2021年から3年間の中期経営計画を発表しました。

島田 業績目標にはインバウンド需要を織り込まず、コロナで生じた新たな「不」の解消に取り組みながら、社会環境の変化に即応し、国内外で持続的な成長を目指します。7つのチャレンジを掲げ、事業ごとに「変えないこと」と「変えること」を明確にし、メリハリを持って取り組むことにしました。

――新中計のスローガンは「逆境を超えて未来へ」ですね。

島田 私は「逆境こそチャンス」と自らに言い聞かせて生きてきたから、今の自分があると信じています。コロナが去っても、多くの課題が人類を待ち受け、地球の逆境が去ることはないでしょう。大きいもの強いものが生き残るのではなく変化に対応したものだけが生き残る。

――容易ならざる時代です。 島田 当社はESGやSDGsをモットーにサステナブル宣言「未来を希望に」を出しました。「正義感を持って世の中の『不』を解消する」という創業理念に基づき、地球環境、社会課題など「未来への不安」に立ち向かい、ステークホルダーと共に「希望」をつくりたいと思います。私は今、創業50周年を迎える2030年の未来から逆算して、当社は今、どうあるべきか、何をすべきか、よく考えて行動しようと訴え、中計の重点テーマに2050年度までにCO2排出量ゼロ、30年度までにサステナブルパッケージ100%、23年度までに認証パーム油100%を明記しました。

当社の目と鼻の先は横浜港です。もし、海水面が上昇したら本社は水浸しになります。国連からとやかく言われるまでもなく、原材料や製造・配送コストがかかっても、気候変動への対応を潔く受け入れるべきです。今より未来を大切にしなければサステナブルな事業推進は、もはや不可能な時代です。

未来に生きる子や孫の笑顔のために持続可能な社会を目指さなければ虚しい。だから私のスローガンは「未来を起点に!」。それを社員共通の価値観に前進したいと思います。

(聞き手/本誌編集長 宮嶋巌)

   

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