三井住友トラストの子会社/日興アセットマネジメントで「守秘義務違反」続出/「公益通報者保護法」を蔑ろ

号外速報(1月12日 10:10)

2021年1月号 BUSINESS [号外速報]

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日興アセットマネジメントの安倍秀雄社長(HPより)

内部通報者への報復だろうか――。公的資金を含む26兆円もの資産を運用する日興アセットマネジメント(社長・安倍秀雄、以下日興AM)の100%子会社「日本インスティテューショナル証券」(NIS)で昨年9月、野村証券からの顧客情報不正入手事件が発生した。ちなみ日興AMは、「メガ信託」こと三井住友トラストホールディングスの子会社である。

関係者によると「不正を内部通報した女性社員が体調を壊し、ここ数カ月、会社を休んでいる」というから事情は深刻である。

内部通報者に有形無形の嫌がらせ?

この不祥事は、19年10月に野村証券からNISに転職し、営業部長の職にあった男性が、20年1月から7月にかけて古巣の野村の社員から法人顧客の取引情報を不正に入手していたというもの。8月下旬に営業部長の部下の女性が内部通報し、不正が明るみに出た。

「彼女は当初、営業部長のハラスメントをNISのホットラインに通報していました。問題の部長はすでに退社し、彼女はその後、親会社の日興AMに異動になりましたが、9月下旬頃から休職となっています。詳しい事情は分かりませんが、日興AMの人事部のトップが『通報者も営業部長の不正を数カ月間知っていながら黙っていた。処分すべきだ』と周囲に漏らしていたので、有形無形の嫌がらせを受けていたのではないでしょうか」(日興AM関係者)。

社長のクビを挿げ替え幕引きを急ぐ

昨年6月に改正された公益通報者保護法(2年以内に施行)では、事業者に公益通報者に対する不利益な取扱いを禁じるだけでなく、通報者を特定させる情報の守秘を義務付け、この守秘義務違反には刑事罰を科すことにした。

ところが、日興AM社内では、通報者が誰かが知れわたり、そのためか、本人は体調を崩し、長く会社を休んでいるという。会社側の通報者の保護に瑕疵があり、守秘義務違反の疑いが濃い。

本誌はNISに件の通報者の処遇や保護措置について文書により取材を申し込んだが、「ご質問に記載されています事実の有無を含め、ご回答を差し控えさせていただきます」と拒否された。

一方、NISは不正発覚後、11月18日に社長のクビを挿げ替え、再発防止に取り組むと発表した。体制刷新(社長交代)により、幕引きを急いだかっこうだ。

NISは日興AMの完全子会社であり、本来なら親会社のコンプライアンス部門のトップ、森田收専務の管理責任が問われることころだが、不問に付されたという。

顧客情報の不正入手という由々しき事態にもかかわらず、NISは独立性が担保された第三者委員会による調査を行わず、社内調査により不正入手情報を第三者が利用した事実はないと発表したが、「とても信用できない」(金融筋)との批判がある。

最高投資責任者の不正をもみ消しか

実は、日興AMは現在、もっと深刻なコンプライアンス問題を抱えているという。同社の最高投資責任者(CIO)がパワハラや、部下を連れ立っての賭け麻雀をしているとの内部通報があったにもかかわらず、人事・コンプライアンス部門が事実上もみ消し、逆に内部通報した社員を降格処分にしたというから、聞き捨てならない。

さらに、コンプラ部門の責任者である森田専務自身のハラスメントに関する内部通報もあったという。これほどコンプラ意識が希薄な社内で公益通報者保護法が守られてきたとは考えにくい。冒頭の内部通報を行った女性も不当な扱いを受け、会社を休まざるを得ない状況に追い込まれたのではなかろうか。

   

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