参議院自民党幹事長 世耕 弘成氏に聞く!(聞き手/編集長 宮嶋巌)

「前例主義を嫌う」骨の髄まで実務家首相

2021年1月号 POLITICS [キーマンに聞く!]

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1962年生まれ。早大政経卒。98年参院和歌山選挙区初当選(通算5期)。内閣官房副長官、経済産業大臣を歴任。祖父は近畿大学創設者、世耕弘一氏。2019年9月より現職。

――幹事長から見た総理は?

世耕 私は3年7カ月の間、官房副長官として当時の菅長官にお仕えしてきました。私から見た総理は「仕事の結果で見てほしい」という、強烈な自負心を持った実務家であり、前例主義を極端に嫌う政治家です。国民感覚からかけ離れたことは躊躇せず見直しを求める方です。

私には、その胆力を目の当たりにした強烈な体験があります。2013年のアルジェリア人質事件の際、テロに遭った方々を連れ帰る政府専用機の派遣を主張する菅長官に対して、関係省庁は「テスト飛行なしで飛んだ前例はない」などと、できない理由を並べて抵抗しました。最後は、菅長官が「これは政治判断だ、飛ばしてくれ」と厳命し、皆さんを政府専用機で日本にお連れすることができました。常に国民目線に立ち前例は気にしない、それが政治家菅義偉の神髄だと、私は思っています。

また、総理は著書の中でマキャベリの言葉を引き「弱体な国家は常に優柔不断である、そして決断に手間取ることは、常に有害である」と説いています。実際、就任直後から総理の迅速な決断が続いています。デジタル庁創設、規制改革、携帯料金値下げ、不妊治療保険適用、地銀改革などを打ち出しました。

――個別政策はわかりやすいが、内政、外交にわたる国家ビジョンや哲学が見えません。

世耕 菅総理は所信表明で、前総理が多用された故事来歴に基づくエピソード紹介や議場への賛同呼びかけといった手法を取らなかった。骨の髄まで実務家である菅さんは「けれん」を嫌う。非常に口が固く余計なことは言わない。逆に「やると決めたことは必ずやる。仕事は結果が全て」という強い決意と覚悟の表れではないかと思います。

自民党総裁就任の記者会見で「せっかく就任したのだから仕事をしたい」(9月14日)と発言されたのは本心であり、感染症拡大防止と社会経済活動の両立が最優先と考える実務家首相の念頭に、そもそも早期解散の目論見はなかったと思います。

――政府は総額73兆円を上回る追加経済対策を決めました。

世耕 国の直接の支出30兆円に財政投融資を加えた財政支出は40兆円。国内の需要不足が7~9月期に34兆円に膨らんだため、それに見合う規模です。

――規模ありきではないか。

世耕 大企業の大幅な赤字決算が相次ぎ、中小企業からは、今の状況が年明けも続くようであれば閉店、廃業、雇用調整に走らざるを得ないとの悲鳴が聞こえてきます。喫緊の感染防止に6兆円を投じ、このほか事業規模の7割はポストコロナに向けた経済構造の転換に振り向けました。特に重点を置くのは、総理が看板政策に掲げる「脱炭素」と「デジタル化」です。どうやってこの野心的な目標を推進していくか――。総理は多くの識者の意見を聴きながら、自分の頭で考え抜いている。そういう方です。コロナとの闘いはワクチンが実用化されれば終息するという明確な希望の灯があります。加えて日本にはもう一つの希望の灯がある。来夏の東京五輪です。政府と国民が一体となって知恵を絞り、大会の簡素化と感染防止策を徹底し、何としても大会開催を実現したい。

(聞き手/編集長 宮嶋巌)

   

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