社内人脈に乏しい内田社長兼CEOと同じ購買畑の人間を社外から呼び戻し、腹心として経営再建計画づくりに当たらせるという。(2月28日11:00)
2020年3月号 EXPRESS [号外速報]
内田誠・日産自動車社長兼CEO
日産自動車は4月1日付で、大手自動車部品メーカーのマレリ(旧カルソニックカンセイ)の渡部英朗副社長を、経営企画担当の専務として迎え、執行の最高意思決定機関である経営会議メンバーに入れる役員人事を決めた。近く発表する。
渡部氏は1989年、慶応大学法学部を卒業し日産に入社した。購買部門が長かったが、カルロス・ゴーン氏が社長のときにEV(電気自動車)ビジネスの責任者に抜擢され、ゼロエミッション事業部長などを歴任した。2011年に執行役員に昇格したが、わずか2年で退任し、カルソニックカンセイに異動していた。カルソニックカンセイは日産の子会社だったが、17年にファンドに売却され、19年にマレリに商号変更した。
このほど日産の社長兼CEOに就任した内田誠氏は現在、5月発表予定の経営再建計画を練っているが、日産関係者によると、「新たな戦略をまとめる人材に事欠いている状態」という。そこで、内田氏は自身と同じ購買出身の渡部氏を呼び戻して腹心にするという。
日産は、ゴーン氏が経営トップ時代に経営企画機能が骨抜きにされ、企画畑の人材が育っていない。これまで、経営会議に経営企画担当役員が入ることはなかったが、企画機能を強化するため、渡部氏を経営会議にも加える。
もっとも、この人事には早くも起用プロセスに疑問の声が出ている。
日産関係者によると、日産は今回、渡部氏を「山内康裕・前暫定CEOが、親しくしているマレリの森谷弘史会長に頼んでもらい受けた」と言う。中途入社で購買部門の経験しかない内田氏は、社内ネットワークに乏しく、自分を役員に引き上げてくれた山内氏を頼ってばかりいるという。山内氏は2月18日の臨時株主総会で日産取締役を退任し、すべての役職から身を引いたが、あまりにも内田氏が頼るため、「事実上の相談役」になっているという。会社を去った人間が重要な人事にかかわるのは問題だとの意見だ。
渡部氏の資質自体にも様々な意見がある。ある日産OBは「渡部氏は調整型でリーダーシップを発揮するタイプではない。この局面で経営企画を任せるのは必ずしも適任ではない」と、身内人事に警笛を鳴らす。