「風蕭蕭」

政治主導でもっと議論を

2020年3月号 連載 [編集後記]

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佐々木毅東大名誉教授

「あえて申し上げれば、政治主導というものは、官主導の反対概念としてだけ通用するものではなくて、与党と政府の関係のあり方とか、国会審議のあり方とかを議論するのが政治主導の本来の内容ではないかということを考えるにつけ、議論の広がりの少なさというものに少なからずガックリきているというのが正直なところです」

(2019年に文化勲章を受章した佐々木毅・東大名誉教授、2020年1月31日、日本記者クラブで)

行き過ぎた「政治とカネ」の問題を解決すべく、1990年代に総選挙の方法を、それまでの中選挙区制から小選挙区比例代表並立制に変える際、政治学者として主導的な役割を果たした佐々木氏は、「お前はたいしたことができなかったと言われればそれまでのことなんですが」と前置きしつつ、「とりあえずそれだけは申し上げておきたい」と、日本の政治家は政治主導でもっといろいろ議論するべきであることを強い口調で説いた。

最近、とりざたされる政治の劣化については、「気になるのはウソの問題ですね。不正確な発言が非常に増えている。政治全体で。『政治にウソはございません』というのが、これこそウソなのか知りませんが、少なくともウソは、ある程度以下にコントロールするのが民主政の体制的な正当性の一つだったと思います」と話した。

政治家の信条が有権者に感情的に伝わるのが最優先で、客観的な事実などどうでもよいという政治文化、「ポスト・トゥルース・ポリティクス」なる言葉がイギリスやアメリカといった民主政の国において平気で飛び交う昨今。

佐々木氏の結びの言葉は、「おそらく日本にも気になる現象がいろいろあるのだと思います。そういう意味では、もう我々としてできることは、さらに悪くならないように、どれだけのことができるかなんですけども」だった。

   

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