精密林業計測 代表取締役 竹中悠輝

ドローンで「森林資源」を精密把握

2020年3月号 BUSINESS [ヴィジョナリーに聞く!]

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竹中悠輝氏

竹中悠輝氏(たけなか ゆうき)

精密林業計測 代表取締役

1994年3月生まれ、25歳。信州大学農学部を卒業し、現在、信州大学大学院総合医理工学研究科博士課程休学中。2017年5月に精密林業計測を設立し代表取締役に就任。

――どうやって測定を。

竹中 回転翼6枚の大きめのドローンに筒型の近赤外線レーザーのセンサーを取り付けて、森林の上空を飛ばします。1回20分ほどの飛行で5~10haを計測できます。空からの測量は建設関係で既に地形の読み取りに使われていますが、私たちは地形と共に森林のデータも計測して解析します。1本ごとにどこにあるか位置情報を把握し、IDナンバーを付け、それぞれの木の高さや体積を示します。体積は林業の世界では材積と言いますが、木の高さと地面から1.2mのところの幹の直径から計算します。この直径だけは山に入って何本かピックアップし計測して求めます。一本一本、正確な位置情報と体積を摑みますので、間伐の際、どの木を間引くとちょうど適切な量を切り出せるのかや、山からの運び出しが最も効率的になるかを知ることができます。

――なぜこの技術で起業を。

竹中 戦後すぐの日本では、料理を作るにも家を建て直すにも山の木をたくさん使いました。もっと需要が増えるだろうと植樹を増やしたところ需要は減り、さらに木材の関税をゼロにしたため外材が大量に入ってきて価格が低下し放置される森林が増えました。森林は植樹から60年経ったころに、主伐と言ってある程度の面積で木を全部切る時期に入ります。大量植樹した森林が主伐期を迎える近年、ちょうど外材と国産材の価格差が縮小し、だったら国産材を使おうという機運が高まっているのですが、管理が不十分なことに加えて山林所有者の境界は複雑に入り組んでいるため、売れる木は大量にあるのに、誰がどのくらい持っているか分からない状態になっています。そこで森林の資源量を正確に測るサービスを提供しようと考えました。

――次の一手は。

竹中 広葉樹についても空から正確な資源量を出せるようにしたいと考えています。針葉樹は一本一本が尖った円錐型なので区分しやすいのですが、広葉樹は丸い扁平な形なので、今の技術ではうまく区分できません。家具の材料としてケヤキやクリなどは非常に価値が高く、例えば大きな食卓を一枚板で作れる広葉樹はスギやヒノキよりずっと値が高いとされますが、今は運任せで山から出てくる状態です。それが正確にどこにどのくらいあるか分かるようになればと、大学と共に研究しています。森林信託の推進にも役立つと考えています。日本は、北欧諸国やカナダ、ニュージーランドに比べて林業のスマート化が進んでいないとされています。森林境界と森林資源が正確に特定できていないためだと考えられるので、当社の技術は有効だと思います。

(聞き手/本誌編集人 宮﨑知己)

   

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