経済再生担当大臣 全世代型社会保障改革担当大臣 内閣府特命担当大臣(経済財政政策) 西村 康稔 氏

消費税10%は「全世代型社会保障改革」の第一歩

2019年11月号 POLITICS [キーマンに聞く!]

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西村 康稔 氏

西村 康稔 氏(Yasutoshi Nishimura)

経済再生担当大臣 全世代型社会保障改革担当大臣 内閣府特命担当大臣(経済財政政策)

1962年兵庫県生まれ。東大法卒。経産省入省。米メリーランド大で修士号。2003年衆院初当選(兵庫9区、当選6回)。外務大臣政務官、内閣府副大臣、自民党筆頭副幹事長、内閣官房副長官を経て初入閣。自治相を務めた故・吹田愰氏は岳父。安倍総理の側近中の側近である。

――安倍総理が「内閣最大のチャレンジ」と意気込む全世代型社会保障改革の担当大臣に指名されました。

西村 9月20日、「全世代型社会保障改革検討会議」(議長・安倍総理)の初会合を開き、誰もが安心して暮らせる令和の時代の社会保障制度改革をスタートさせました。日本社会の変化は凄まじい。最近7年間に現役世代(15~64歳の生産年齢人口)は約540万人も減る一方、就業者数は約450万人増えました。近年、日本の15~59歳女性の就業率は急上昇し、共働き世帯数が1219万と、専業主婦世帯数の2倍になる一方、現在就労している60歳以上の方の8割が70歳以降まで働くことを希望しています。元気で意欲溢れる高齢者が、年齢にかかわらず働ける環境づくりが急務なのです。

――団塊世代が75歳以上になり始める2022年以降、社会保障費が急増します。給付と負担の論議が欠かせません。

西村 多様な働き方の中で、誰もが安心して暮らせる社会保障システムをいかに築き、次世代に引き継いでいくか、多角的な視点から議論し、国民的なコンセンサスを得たいと考えています。財政の視点のみで必要な社会保障をバッサリ切るようなことは全く考えていません。

初会合では70歳までの就労機会の確保(法制化)や、意欲ある高齢者が兼業、副業できる環境整備、年金の受給開始年齢を自分で選択できる範囲の拡大などの意見がありました。また、お年寄りだけでなく、子どもたち、子育て世代、現役世代まで広く安心を支えていくことが大切であり、そのために年金、医療、労働、介護など社会保障全般にわたる持続可能な改革が必要との指摘も頂きました。

感慨深い幼児教育・保育の無償化

――「総論賛成、各論反対」の大議論になりますね。まとめ役の西村さんと加藤勝信厚労相の手腕が問われます。

西村 加藤さんとは当選同期。私が09年の総裁選に出馬した時、事務局長として推薦人になってくださいました。実は互いの生い立ちも似ています(笑)。共に官界出身(加藤さんは財務省)で二世議員ではなく、共に落選経験があります。双方の岳父(加藤六月元農水相と吹田愰元自治相)が親しかったこともあり、昔から非常に近い関係です。

――今日(10月1日)消費税が10%になりました。安倍政権が短期間に2度の増税を決断したことは壮挙だと思います。

西村 消費増税は不人気政策の最たるもの。7月の参院選で野党はこぞって阻止に回ったが、我々はどんな批判を受けても、安倍総理のリーダーシップの下で政府・与党が一体となって、将来の日本のために正しいと思うことをやり遂げる強い意志を示したということです。

今回の2%の引き上げによる税収増は年間5・7兆円ですが、このうち軽減税率と幼児教育・保育の無償化などの軽減分を差し引くと、税率引き上げに伴う家計の負担増は約2兆円にとどまる。さらに新たな対策としてプレミアム付商品券など総額約2・3兆円の措置をとります。前回14年4月に5%から8%に引き上げた時の負担増は約8兆円でしたから、今回は経済への影響を十二分に乗り越える対策が講じられているのです。

より重要なことは、今回の引き上げに伴う増収分の使途を変更し、10月からスタートする子育て支援策に充てたことです。私は当選間もない頃、自民党の幼児教育無償化委員会の事務局長を務め、初めて幼児教育無償化の提言をまとめた経緯があり、感慨深いものがあります。消費増税を財源とする幼児教育・保育の無償化は、将来世代を育む投資の循環を確立する意味があり、全世代型社会保障改革の大きな第一歩と考えています。

「第4次産業革命」を根付かせる

――日銀が発表した9月の短期経済観測は、大企業製造業の景況感を表す指数が悪化し、6年ぶりの低い水準でした。

西村 通商問題や地政学的リスクもあり、景気は輸出を中心に少し弱含んでいる部分がありますが、全体としては内需が堅調であり「緩やかに回復している」と認識しています。先行きについては、今世紀に入って6年連続の最高水準の賃上げが続いており、雇用環境は非常によい状況にある。引き続き緩やかな回復が続くと期待しています。

経済財政運営については潜在成長率の引き上げが最大の課題です。私は甘利明経済財政担当相時代の副大臣として、アベノミクスの成長戦略に深く携わり、国家戦略特区や規制改革を推進してきました。農産物の輸出やインバウンド政策などでも、アベノミクスの「3本の矢」は大きな成果を上げている。消費増税の影響に十分目を配りながら、そのモメンタムに更に勢いをつけ、経済の好循環を実現することが、私の役割と考えています。

私が考える成長戦略の軸は、第4次産業革命への対応です。IoT、AI、ロボット、自動運転、ドローンなど、世界的な技術革新がものすごいスピードで進んでおり、それらを日本にも根付かせたい。生産性向上につながる先端技術に投資を促し、ニュービジネスを阻害する規制は撤廃します。技術革新は大都市だけでなく地方にもチャンスをもたらします。さらに一歩踏み出す地場の「プチ創業」も応援したい。経済の好循環を確保するため、大企業が持つ240兆円の現預金が技術やヒトへの投資に回る環境の整備にも取り組みたいと思います。

――満を持しての登板ですね。

西村 2年前に官房副長官を命じられた時、安倍総理から「自分も(官房副長官時代に)小泉さんの首脳外交を見ながら勘所をつかみ、今日がある。もっと経験を積んで欲しい」と諭されました。この間、総理とトランプ大統領の首脳会談に9回、電話会談に23回も同席したことは、何にも代えがたい財産になりました。アベノミクスはとやかく批判されるが、18年度の税収は過去最高の60兆円を超え、新規国債の発行額は7年前の44兆円台から32兆円台に減り、25年度のプライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化の目標達成も視野に入ってきました。何としても自分の手で「経済再生」と「全世代型社会保障改革」をやり遂げたいと思います。(聞き手/本誌発行人 宮嶋巌)

   

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