「ハコ企業御用達」の信用調査会社って何?

2016年7月号 BUSINESS

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ワールド・ロジ、インスパイアー、グローバルアジアホールディングス(旧プリンシバル・コーポレーション)、メッツ、石山ゲートウェイホールディングス、エル・シー・エーホールディングス──。

すでに上場廃止となったこれら「ハコ企業」(仕手筋やいかがわしい投資ファンドに乗っ取られ、資産を食い散らかされたり、一般投資家からカネを巻き上げたりする、「器」として使われる上場企業)の一群には、世間にはほとんど知られていないが、奇妙な共通点がある。

過去に第三者割当による増資や新株予約権発行で資金調達した際、割当先やその資金借入先の「反社チェック」に「セキュリティー&リサーチ」という調査会社を利用していた点だ。

「反社チェック」とは暴力や威力、詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する暴力団など「反社会的勢力等」との関係があるか否か、および警察当局の捜査対象になっているか否かについて確認する手続きだ。

株価操縦目的の見せ金による架空増資など、不適切な第三者割当が大きな問題となる中、2
010年より上場企業自ら割当予定先の属性を調査することが義務付けられ、始まったという経緯がある。

「自ら調査」と言っても、実務上は「トクチョー」「JPリサーチ&コンサルティング」「ディー・クエスト」といった専門調査会社に依頼するのが一般的で、「有価証券届出書」の提出に際してはこれらの調査会社の名は開示されることになる。

セキュリティー&リサーチもそうした調査会社の一つとして多くの実績があるものの、実際、利用企業のその後は冒頭のとおり死屍累々。

ワールド・ロジとインスパイアーは破産し、グローバルアジアと石山ゲートウェイは粉飾決算で逮捕者を出した。

もちろん上場を継続している企業もあるが、不適切な会計処理が発覚したメディビックグループ、民泊事業子会社が旅館業法違反容疑で警視庁の捜索を受けたピクセルカンパニーズ(旧ハイブリッド・サービス)など、いずれも「錚々たる顔ぶれ」(ハコ企業ウオッチャー)だ。

セキュリティー&リサーチの代表者は羽田寿次氏。設立は12年4月で、本社は東京都港区赤坂。ホームページで自社の社名を「セキュリティ&リサーチ」と登記上の正式な表記「セキュリティー&リサーチ」から「ー」を抜いて表記しているのはご愛嬌としても、過去に「反社チェック」をした上場企業が、次々と上場廃止になったり、当局から疑いをかけられたりしながら、説明がない点は看過できない。

代表者自身の調査能力がうかがい知れる、経歴や賞罰、実績がホームページにない点も腑に落ちない。

調査会社の選定は上場企業側に委ねられており、調査能力を担保する公的な認証があるわけではない。チェックの失敗例を第三者が調べて開示する仕組みもない。

こうして怪しい第三者割当がフィルターを通過している現状では、とうに事業性を失った企業が株価操縦の「ハコ」として延命するのを防ぐのは難しい。

証券取引所が警察当局などと連携して割当先の反社チェックを行う体制に改めるなど、実効性のある対策が求められるところだ。

   

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