羽毛布団の産地偽装疑惑 当局が調査を開始

2016年7月号 BUSINESS [ビジネス・インサイド]

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5月の連休中に朝日新聞が報じた「羽毛布団の産地偽装疑惑」が業界に波紋を広げている。「いつか出ると思ったが、ついに出てしまった。もう業界はこの件で逃げ隠れできない」。中部地方のある羽毛布団メーカーの幹部はそう語る。

この会社では以前から、「東欧産」の羽毛を仕入れたはずが、明らかに羽の質や保温力が劣った中国産羽毛が誤って輸入され、商社が交換にきたことが何度かあったという。

報道があった後、「中国産」羽毛を「欧州産」と偽って販売するのが当たり前になっていた業界は、とたんに「産地」に敏感になり、大手量販店やデパートの仕入先企業などにも、羽毛布団の再検査要求が来るなど影響が出ている。

所管の経産省も気が気でない。「経産省は食品偽装をここ数年、警察と組んで取り締まってきた。しかし、羽毛布団は10年前から業界内で知られていたのに、何も対応してこなかった。担当の繊維課幹部は大いにあわてている」(経産省関係者)

業界が戦々恐々としているのが、今後、産地偽装をしていた業者の実名が出ることだ。

朝日新聞の記事では、特定のメーカーや商社の名前が出ていないため、どの業者が実際に産地偽装していたのか、それにかかわっていたのかが特定されていない。

そのため、業界団体である日本羽毛製品協同組合の幹部らにも「検査方法が確立しておらず、産地を特定できなかったので業者を処分できなかった」などと、消費者にきちんと疑惑を説明してこなかったことへの「言い逃れの口実」を与える結果になっている。

だが、じわじわと外堀は埋められつつある。業界最大の老舗グループと中国の羽毛農場にしたたかに食い込んできた商社の関係性に注目が集まっている。

「この商社は中国羽毛農家から大量の羽毛を集め、日本のメーカーらに安く供給してきた。その際、偽装した産地証明書や欧州産の下げ札も提供してきた」(業界関係者)。当局にも情報提供があり、調査を開始したという。パンドラの箱が開くのはまだこれからだ。

   

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