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「かぼちゃの馬車」スマートライフの裏側

2016年3月号

「素性の怪しげなシェアハウス業者と営業部門が取引したがって困っている」

大手建材商社の審査担当者は顔を顰める。その業者は「スマートライフ」(東京・銀座)。女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を都内中心に続々とオープンしている。2012年に設立されたばかりだが、昨年7月期の売上高は188億円(前期は20億円)、営業利益12億円(同4900万円)と急成長中。20年にも株式公開すると鼻息が荒く、低迷する住宅業界の注目の的だ。「かぼちゃの馬車」は一時問題となったマンションの一室を間仕切りしただけの「脱法ハウス」とは異なり、「寄宿舎」として建築基準法もクリアしているという。しかも、トイレ、シャワー、洗濯機、キッチンなどは共用で居室部分はわずか7㎡だが、新築のため家賃は普通のワンルーム並み。狭い土地でも高利回りが得られると、地主に触れ回っている。確かに高級住宅地である目黒区の物件は家賃が10万円近くする。

一方、入居女性側のメリットは邸宅風のおしゃれな外観と「敷金・礼金ゼロ」。地方から職を求めて上京してくる20代の非正規雇用の女性が年々増えているが、彼女らにとってアパート入居時の敷金・礼金のハードルは高い。かといってネットカフェに寝泊まりすれば、履歴書に住所を記載できず就職活動すら満足にできない。東京一極集中と格差社会の歪みが、女性たちを「かぼちゃの馬車」に向かわせているのだ。スマートライフでは他社との提携により、入居者に就職斡旋や婚活サポートまで行っており、さながら「新たな貧困ビジネス」(前出の審査マン)の様相を呈している。

社長の大地則幸氏は「レオパレス」の創業家が08年に新たに立ち上げたMDI(東京・銀座)の出身で「若いがなかなかのやり手」(取引先)というが、関係者は「実質的な経営者は別人だが、事情があって表に出られない」と打ち明ける。そのわけありの人物は佐藤太治氏いう。

佐藤氏はバブル期に「ライオンズ石油」社長として格安ガソリンやカリフォルニア米の自主輸入を手掛け、お上に楯突く経営者と持て囃されたこともある。その後、1993年に「ビデオ安売王」というビデオショップチェーンを創業し、瞬く間にフランチャイズを全国1千店に広げたが、95年に風営法違反(禁止区域営業)容疑で佐藤氏自身が富山県警に逮捕された。その翌年、失速した安売王の運営会社の「日本ビデオ販売」を「計画倒産させた」(アダルト業界大手)と、裏街道で騒がれたツワモノだ。同社の扱うソフトの多くはAVで、通常のレンタルショップと異なり身分証提示の気まずさがないため流行った。98年には旧住専から16億円を詐取した容疑でも逮捕された。

近年は自転車広告事業と銘打ち「めだつ広告」なる会社を設立、一口298万円で加盟店を募ったが、カネだけ集めて自転車の手配がされないと、集団提訴される始末。裏側を知る商社の審査担当は「スマートライフにカネを貸す銀行は審査の甘いスルガ銀行ぐらいではないか」と言う。昨年4月に持ち株会社「起業開発研究所」(東京・一番町)を設立、「佐藤色」を消そうとしているが、同社オーナーは「昨年、偽装離婚した前妻」(審査担当)と酷い噂が広がっておりこれで上場したらお化けだ。