にわかライバルが急増! 元祖「物流不動産」の本領

山田 御酒 氏
プロロジス日本法人 社長兼CEO

2016年2月号 BUSINESS [インタビュー]
聞き手/本誌編集長 宮嶋巌

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山田 御酒

山田 御酒(やまだ みき)

プロロジス日本法人 社長兼CEO

1953年生まれ。山口県出身。76年早大商卒。総合建設会社フジタ入社。18年間の海外勤務(イラク、米、英)を経て、国際事業部長、営業本部営業統括部長を歴任。02年プロロジスに転じ、04年日本共同代表(開発担当)、09年より日本法人の社長兼CEOを務める。

写真/平尾秀明

――賃貸用の大型物流倉庫(延床面積3万㎡超)の建設が目白押しです。

山田 5月に竣工するプロロジスパーク千葉ニュータウンの延床面積は約13万㎡(地上5階建て)、これは甲子園球場のグラウンドの約10倍です。9月に竣工予定のプロロジスパーク茨木はもっと大きく、国内最大級の約19万㎡(地上6階)の広さです。ちなみに15年に供給された物流不動産の総面積は4年前の約5倍、過去最高の約200万㎡に達しました。今年はさらに20%増える見込みです。

――供給過剰ではありませんか。

山田 中長期的には物流施設がまだまだ足りない。小売業がネット通販に続々と参入し、物流量が膨らむとともに、高度な機能を持った配送拠点への需要が急増しているからです。実際、eコマース市場は、14年の13兆円から18年に20兆円に急成長する試算もあるくらいです。

――大型物流施設を開発・賃貸するという「物流不動産」の事業モデルは、そもそも日本にはありませんでした。

山田 その草分けのプロロジスが米国で生まれたのは33年前(83年)。現在では、欧米アジアの21カ国に約3200棟の物流施設を運営する世界最大手に成長しました。99年に日本に進出し、東京・江東区で第1号物件を02年に完成させたのが、我が国の物流不動産のです。

世に広まる「ランプウェイ倉庫」

――フジタからプロロジスに転じた02年当時、日本法人は10人前後の小所帯だったそうですが、迷いはなかったですか。

山田 全くなかったですね(笑)。若い頃からグローバル企業で働きたかった私は早大英語会(WESS)に入り、ディベートに打ち込みました。WESSの同期には、トヨタ自動車元専務の友添雅直さん(中部国際空港社長)がいます。フジタでは、当時のゼネコンの新入社員にしては珍しく英語が話せるということで、入社3年目(25歳)にイラク駐在(3年間)となり、83年(30歳)に米国に赴任し(8年半)、日本に戻ることなく、91年に英国に赴任し、初代英国法人社長を務めた後、帰国したのは97年でした。

――ゼネコン勤務26年間のうち海外駐在が18年間とは異色ですね。

山田 米国時代にインダストリアル不動産開発を手がけ、不動産投資信託(REIT)の組成や不動産の証券化、資産運用、資金管理を経験する中で、米国における物流施設開発の目覚ましい成長を見てきましたから、近い将来、日本でも先進的な仕様や設備を取り入れた賃貸用の物流不動産が急拡大すると思いました。

――プロロジス入社3年目に共同代表となり、開発部門を任されましたね。

山田 日本での第4号案件のプロロジスパーク東京大田で、初めてランプウェイをらせん状にし、各階へ40フィートのコンテナトレーラーが直にアクセスできるようにしました。広大な国土の米国では平屋建ての物流倉庫が常識でしたから、ランプウェイを敷設した多層階構造は、米国本社の稟議が通らず突き返されました。苦労の末、入居企業が決まっていることを理由に、何とか説得することができました。今では「ランプウェイ倉庫」と呼ばれるほど、日本の物流不動産のスタンダードになっていますが、我々がその「元祖」なのです。

――ずっと順風満帆でしたか?

山田 とんでもない。リーマン・ショックの08年末に、米国本社の株価が73ドルから2ドルに大暴落し、もはやこれまでと覚悟しました。その後も紆余曲折がありましたが、日本法人はリストラをせず、社員がひとりも辞めずについてきてくれたおかげで11年の景気回復と併せて反転攻勢に出ることができました。

――ここ数年、三井不動産、大和ハウス工業、オリックス、総合商社などが物流不動産に本格参入してきました。

山田 名だたる不動産大手や総合商社の新規参入は、日本市場で賃貸用物流施設が主流となり、事業の裾野が広がった証拠です。とはいえ、我が国のAクラス(最新鋭)の物流不動産の総面積は現在約1500万㎡。当社の開発実績は81棟、延べ538万㎡にのぼり、その先駆的な実績は、後発組の追随を許しません。当社は業界のパイオニアとして、景気に左右されず、年間投資額500億円前後、延床面積40万㎡を供給していきます。

「コピーと本物は思いが違う!」

――過当競争になりませんか。

山田 我が国の倉庫の総面積は約4億5千万㎡もあり、このうち最新鋭の物流施設は3%にすぎません。80年代から供給が本格化した米国の最新鋭の物流施設は30%に達しており、日本市場は米国に比べて拡大余地が大きく、まだまだ成長できます。しかも70年代に建設された旧来型の倉庫はすでに更新期を迎えており、高機能で好立地な物流施設の開発需要に一段と弾みがつきそうです。

――物流施設のハード面の差がなくなり、にわかライバルが急増しました。

山田 当社はランプウェイ、免震構造、太陽光発電、レストランやコンビニなどのアメニティ設備などをいち早く導入し、成功事例として公表してきました。結果、それが最新鋭の物流施設の標準となり、市場が拡大するとともに新規参入が急増しました。しかし、米国本社のハミード・モガダム会長兼CEOは「コピーとの競合は避けられないが、本物は思いが違う!」と怯む様子がありません。プロロジスは専業物流不動産の世界最大手であり、グローバル社員1500人(うち日本法人は120人)の全員が物流施設のプロです。インハウスの設計・コンストラクションマネジメント部隊を持っていることも強みであり、同業他社よりスピード感があり、ソフト面でも一日の長があると自負しています。さらに当社の圧倒的な優位性は、グローバル企業のプラットホームを活用しながら差別化を図れる点であり、米欧でもアジアでも日本と同じサービスを提供できます。仮に米欧のどこかで物流施設をお探しのお客様がおられたら、すぐさま最新情報を提供できるのも、世界最大手の当社だけです。

   

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