松野 頼久 氏
維新の党代表
2015年8月号
POLITICS [インタビュー]
聞き手/本誌編集人 宮嶋巌
1960年熊本県生まれ。慶大法卒。細川元総理の秘書を経て、2000年民主党から衆院初当選(現在当選6回)。鳩山政権で内閣官房副長官。12年日本維新の会を結党。今年5月より現職。亡父は松野頼三・元農相・労相。
写真/平尾秀明
――本日(7月8日)、安全保障関連法案の対案を衆院に提出し、徹底審議を求めました。
松野 我が党は、政府案が解釈改憲の閣議決定で認めた集団的自衛権の行使を認めません。我々は自衛権を再定義しました。従来、政府が定義している個別的自衛権よりは少し広い。例えば、我が国を守るため日本周辺で活動している外国軍が攻撃され、「日本への武力攻撃に至る明白な危険」が発生した場合、自衛権の「再定義」により反撃可能になります。政府案を「違憲」と断じた小林節先生(慶大名誉教授)は「維新案は個別的自衛権の枠内(合憲)」と仰っていますし、コメントを求めた元内閣法制局長官や憲法学者の方々からも「違憲」の指摘を受けていません。
――自公は「国際法上は集団的自衛権だ」と主張しています。
松野 憲法学者の9割以上が政府案を違憲と言い、国民の8割以上が、政府の説明に納得していません。国民の皆さんに、政府案と維新案のどちらがいいか、ご判断願いたい。憲法適合性を確保した対案が提出された以上、政府与党は国会審議を尽くすべきです。審議を尽くさないなら、採決に応じられない。
――しかし「1強多弱」です。 松野 自民党は決して強くない。昨年12月の衆院選の政党別得票数(比例区)は自民1756万票、民主974万票、維新834万票でした。結果は自民が291議席を獲得し、大勝したけれど、民主と維新の合計得票数は自民を上回っていました。ちなみに民主が政権交代を果たした09年衆院選の得票数は2984万票。当時の民主への圧倒的な支持に比べ、今の自民は強くない。ところが、有権者の半数以上が安倍政権以外の選択肢を求めているのに野党は全く頼りない。安倍さんは危なっかしいが、今の野党よりマシということ。我々は国民の期待に応えるどころか落胆させています。
――今の野党はダメですね。
松野 このままでは政権交代は不可能です。政権与党は驕り、国会は緊張感を失うでしょう。国民から見て既存野党の合流はつまらない。民主も維新も生活も残らず解党、ゼロから出直すのが一番いい。新たな理念の下に100人以上の議員が集まったら、政権交代可能になる。
――民主は自主再建路線です。
松野 今の延長で活路が拓けると考えている民主党議員がどれだけいるか――。小選挙区制のもとで「1強」の自民と議席を争うには野党がまとまるしかないのです。まずは来夏の参院選をどう戦うか。さらに、来年末はおそらく「解散」がある。17年4月の消費増税前に総選挙に打って出る可能性があります。来年は衆参の国政選挙があると考えたら、今年中に100議席以上の野党結集を実現し、1人区でも勝てる候補者を立てないと、勝ち目はない。政権与党は勝てそうな時に、いつでも解散できるわけですから、野党勢力の結集は待ったなしです。議員個人の思惑や好き嫌いを言っている場合じゃない。野党再編のうねりが、必ず起こってきます。