年貢の納め時「落合インデックス」周辺の怪

2013年7月号 DEEP
by 山口義正(ジャーナリスト)

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年貢の納め時は突然やってきた。

6月12日、ジャスダック上場のゲーム制作会社インデックスに証券取引等監視委員会の強制調査が入った。循環取引による売上高の水増しなど粉飾の疑いである。その日の朝、強制調査に踏み込む現場を映像に収めたのはNHKとTBSくらい。急襲ぶりがうかがえる。

本誌は前号でインデックスが決算修正で瀬戸際に立っていることを報じたが、監視委が動き出す前兆をとらえたスクープだった。今後の焦点は警視庁や東京地検特捜部が、創業者の落合正美会長や、インデックスを傘下に収めた日本振興銀行周辺で起きた不可解な資金の流れをどこまで解明できるかだろう。

当局が目をつけているインデックス周辺企業の一つに、正体不明の経営コンサルティング会社がある。落合会長の資産管理会社、落合アソシエイツ傘下で貸金業や病院経営のコンサルティング業務などを営むAAアドバイザーズがそれだ。

落合会長がAAの代表取締役に就任したのは、2010年8月20日。銀行版「循環取引」で振興銀行が破綻するわずか20日前。もっぱらゲームや映像などのコンテンツビジネスを手掛けてきた落合会長が、急に病院経営のコンサルティングを始められるとは考えにくい。

AAはネット上で検索しても、HPすら見つからない。商業登記で本店所在地を調べると、東京・永田町のオフィスビル。確認のために出掛けてみたが、エントランス前に掲げてある案内板にAAの文字は見当たらない。妙に思って常駐警備員に聞いた。

「このビルにAAアドバイザーズは入っていませんか」

「いや、聞いたことないですね。(入居者は)そこの案内板に書かれているので全部です」

案内板にはAAで取締役を務めたことのある人物が経営する金融コンサルティング会社の名前が記されており、AAはここを本店としたペーパーカンパニーなのだろう。この金融コンサルティング会社に電話をかけ、AAとの関係を尋ねてみたが「担当者が不在で分からない」。

有価証券報告書によると、AAにはインデックスから前期、前々期と28億円もの貸付金があり、10年9月の振興銀行の破綻時には、同行傘下で信用保証業務を手掛けていた中小企業保証機構(同10月に民事再生法申請)に対してAAから40億円の貸付金があった。

そしてインデックスの開示資料によれば、少なくともその資金の出所の一部はインデックス本体である。実質的に落合アソシエイツと一体とみられるこのペーパーカンパニーに多くの資金を供給し、その資金の行方は霧に包まれている。そのうえAAに対する貸付金について落合アソシエイツからインデックスに担保として提供されたのは、実質的にどの程度の価値があるのか分からない保有するインデックス株なのだ。

そればかりではない。インデックスの過去の有価証券報告書を繰ってみると、その融資先には大手信用調査会社でさえ情報のストックがない実態不明の会社があったり、グループ外に売却したかつての子会社に対し、インデックスが総資産の5分の1に相当する大きな融資を行ったりと、不可解な点は数え上げればきりがないほどだ。

   

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