「ハイブリッド」を極める! トヨタの「エコカー最前線」

年末に世界最高の「電費」を実現した高性能電気自動車「eQ」を限定導入開始。次世代エコカーの本命、プラグインハイブリッド車(PHV)の燃費も驚異的!

2012年11月号 INFORMATION
取材・構成/編集部 和田紀央

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電気自動車「eQ」を紹介するトヨタの内山田副会長(9月24日)

今年8月末、トヨタのハイブリッド車(HV)の世界販売が累計440万台を突破した。さらに、2012年のHVの世界販売が年間100万台を大幅に超える見込みだ。プリウスのチーフエンジニアとして著名な内山田竹志副会長は「エコカーは普及してこそ環境に貢献できる。いよいよHVがメインストリームの時代を迎えました」と自信たっぷりだ。

12年上半期(4~9月)の国内車名別新車販売も絶好調。首位はHVの代名詞となった「プリウス」(4年連続)。2位には、プリウスより小型で割安の「アクア」(昨年末発売)が食い込み、トヨタのHVブームを浮き彫りにした。

世界最高の電費を実現した「eQ」

勢いに乗るトヨタは9月24日、環境技術開発とエコカーの展開計画を発表。この日の目玉は、今後、15年末までの約3年間で、新車名とモデルチェンジを合わせ、新型HVを21モデル投入する計画。これにより、13年~15年のHV世界販売台数は、毎年100万台以上を見込んでいる。

世界最高の熱効率と低燃費を実現する新型「2.5L-AR系ガソリンエンジン」

トヨタはもちろん、従来型エンジン車の燃費向上とエミッション低減にも力を注いでいる。「省エネルギー」への取り組みでは、世界最高の最大熱効率を追求した新開発ガソリンエンジンや高性能グリーンディーゼルエンジン、さらには高効率トランスミッションの開発状況が公開された。「燃料多様化」への対応では、待ちに待った電気自動車(EV)「eQ」が登場。コンパクトなパッケージに容量を最小限に抑えた高出力の新型リチウムイオン電池を搭載し、世界最高の電費104Wh/㎞を実現。航続距離100㎞、最高速度125㎞/h、AC200Vで約3時間という短時間で満充電可能だ。キュートな高性能EVとして話題を呼びそうだ(12月以降限定導入開始)。

さらに、水素を電気エネルギーに変換して走行する燃料電池自動車(FCV)については、世界最高の出力密度を達成した新型FCスタックを公開するとともに、日野自動車と共同で開発を進めている新型燃料電池バス(FCバス)の投入計画も明らかにした。

また、高性能化が不可欠な次世代二次電池の研究開発を専門組織で推進しており、電解質性能が世界最高レベルの新たな固体電解質の開発に成功。全固体電池の出力密度が5倍にレベルアップしたと発表した。

トヨタの技術陣は各種のエコカー開発に必要な要素技術が含まれるハイブリッド技術をキーテクノロジーと位置付け、エコカーのさらなる高性能化やコスト削減、商品ラインアップの充実に取り組んでいる。

トヨタが今、「HVにつぐ次世代環境車の柱」に据えるのは、家庭で気軽に充電できるプラグインハイブリッド車(PHV)だ。従来のHVよりモーター駆動での走行距離が長くなり、近距離はEV、遠距離はH
Vとして走れるため、EVとHVの長所を併せ持つクルマだ。

圧倒的な燃費を可能にするPHV


2013年に愛知県豊田市で実証実験を行う「非接触充電」(上)と災害時にも役立つ「外部電源供給システム」

今年1月に販売を開始したプリウスP
HVは、8月末で世界累計販売が1万6千台に達した。公開された「お客様の走行実績(約1350人)」は驚嘆に値する。平均燃費が従来のプリウス21・4㎞/Lから38・5㎞/Lに向上しただけでなく、約15%のお客様(203人)が100㎞/L以上、さらに約8%が200㎞/L以上という驚異の実績を残したことだ。「200㎞/L以上」には乗り方のコツがある。PHVは満充電なら20キロ程度EV走行できる。つまり毎日充電して、近距離を走る分にはガソリンを使わない。

「最後にガソリンを入れたのはいつだったのかなぁ」「表示される燃費の数値は驚き」「長距離でも安心して走れる」「環境にもお財布にも優しい車」「いかにEV走行だけで走るか、ゲーム感覚が楽しい」――。究極のエコカーライフを楽しむプリウスPHVユーザーの声である。「使い方によって驚くほどの燃費になることが実証された」と、内山田副会長は相好を崩した。

PHV普及への自信を深めたトヨタは、その商品力向上のために、災害などの非常時の電源としてハイブリッドシステムを活用する外部電源供給システムの追加や、グレード体系の充実を図る予定だ。さらに充電の煩わしさを解消する「非接触充電」の技術開発にも取り組んでいる。まずは非常時に利用可能にするアクセサリーコンセントを売り出すという。

今後は航続距離と電池コストの課題があるEVより、PHVを含むHVの全盛時代を迎えるというトヨタの読みは確かだ。

   

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