「結党90周年」日本共産党と赤旗の落日

2012年6月号 POLITICS

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日刊紙「赤旗」5月2日付の「党活動」面に、「4月の読者拡大 日刊紙・日曜版とも前進」という大きな見出しの記事が載った。その4日前に市田忠義書記局長名で掲載された文書には「4月も後退だと(赤旗購読者数)は5カ月連続後退という重大な結果になる」と危機感を表明していた。「4月に入って関連組織・団体に講読を呼びかけ、部数を押し上げた」と、関係筋は言う。が、その「前進」の中身は「日刊紙読者で20人。日曜版読者で1369人の増」とお寒い限り。全国的な拡販運動の通算は「後退」しているが、詳細は発表されなかった。ちなみに4月の赤旗の発表では「3月は日刊紙2123人、日曜版8865人の後退となりました」と、部数減が示されていた。

日本共産党は、昨年7月に開催した第3回中央委員会総会で9月からの赤旗値上げを決め、党勢(赤旗読者と党員)拡大のための「大運動」の号令をかけた。講読部数24万部の日刊紙赤旗の赤字が毎月2億円にのぼるため、購読料を月2900円から3400円に値上げしたうえ、部数を2万部増やす目標を掲げた。日刊紙の毎月の売り上げは約7億円だから、とんでもない赤字を垂れ流していることがわかる。現在、日刊紙と日曜版を合わせた赤旗の発行部数は約140万部。日刊紙の没落は目を覆うばかりだ。それを2万増やす計画が、これまでの通算で「後退した」というのだから、「大運動」のゴールである今年7月の目標達成はもはや不可能である。実際、冒頭の記事の結びには「『大運動』目標の総達成をめざして」と書かれているが、そこには「目標」の数字が示されていない。2万部増の目標は放棄されたと見るべきだろう。

「機関紙なのに赤旗の購読料は高すぎる」と、年金生活の党員は言う。ライバルの「聖教新聞」は月1880円で、発行部数は500万部を超える。

「赤旗の読者が減るのは、一言でいえば旧態依然だから。紙面を刷新して、読者のすそ野を広げなければ先細るに決まっている。このご時世に、購読料を月500円も値上げして、部数が増えるわけがない。不可能な目標を押し付ける本部の方針は間違っている」と、赤旗を購読する労組関係者は酷評する。

日本共産党は今年、結党90周年を迎える。その記念事業としては、07年に没した宮本顕治氏と、副委員長を長く務めた故・上田耕一郎氏の著作集の刊行があるくらい。「赤旗まつり」も企画されていないし、10年ごとに刊行してきた党の歴史書『90年史』も出るのかどうか……。

最近の話題といえば、元委員長の不破哲三氏の夫人、七加子氏の自伝『道ひとすじ――不破哲三とともに生きる』が4月末に刊行されたこと。とはいえ、赤旗は、この件を報道していない。党の指導部でもない一私人の著作だから当然との見方もあるが、発行元が中央公論新社ときけば合点がいく。同社は読売新聞社の系列で、読売といえば渡邉恒雄会長兼主筆の顔が思い浮かぶ。不破氏は一昨年、読売新聞に長期連載し、それを基に『不破哲三 時代の証言』が中央公論新社から刊行された。「夫人の著作もその延長」と関係者は冷ややかだ。読売新聞では写真付きで紹介された夫人の著作を、赤旗が宣伝しないのは、右寄りのナベツネを嫌う党幹部が少なくないからだろう。

   

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