宮島 和美氏 氏
日本通信販売協会会長、ファンケル会長
2012年1月号
LIFE [インタビュー]
インタビュアー・本誌 和田
1950年神奈川県生まれ。成城大卒。ダイエーの常務執行役員を経て、2001年に義兄の池森賢二氏が創業したファンケルに転じ、07年社長、08年より会長。10年6月日本通信販売協会会長に就任。
――このご時世にもかかわらず、通信販売は伸び続けていますね。
宮島 2010年度の通販市場は、前年度より8.4%増加の4兆6700億円になりました。売上高は10年前の2兆3900億円から倍増し、伸び率も10%前後を示した04~06年度以来の高い数値になりました。3.11大震災後、店舗における生活商品の品薄状態から、ネット通販での購入者が増加したように、自然災害にも強く、高齢者層の増加等により、通販の存在意義はますます大きくなっていくでしょう。私ども日本通信販売協会(JADMA)は法律に基づく「通販業界唯一の自主規制団体」であり、現在正会員は518社。加盟社の売上高の合計は3兆円を優に超えています。
――協会長就任前からサプリメントの自主規制に取り組んでいますね。
宮島 サプリの市場規模は1兆円を超え、すでに生活の中に溶け込んでいます。一方で、その法的な定義は明確でなく、医薬品と食品の双方の規制を受ける難しいポジションにあります。表示や安全性のルールが定かではなく、それが消費者トラブルを誘発する一因になっていました。JADMA正会員の約半数がサプリメントを扱っており、業界として最低限守るべきルールを作ることが喫緊の課題になっていました。そこで、主力会員を集めたサプリメント部会を発足させ、09年6月に「サプリメントの取り扱いに関するガイドライン」を制定しました。その中で「サプリメントとは、食生活を補う食品であり、かつ健康の維持・増進などを期待する成分を含有しているもの」と初めて定義しました。これは業界として画期的なことでした。
――さらなる自主規制の取り組みとして、11年8月からサプリメント取り扱い登録制度を始めましたね。
宮島 消費者庁で開かれた「健康食品の表示に関する検討会」に参加し、さまざまな提言を行いましたが、およそ理解を得られず、私はそこでの議論を通じ、業界自ら自主規制を徹底させる必要性を痛感しました。そこで、サプリを販売する会員企業に売上高や商品数など基本的な情報のほか、広告表示、安全性、消費者対応について協会にアンケート登録してもらうことにしました。これにより正確な市場データが集まり、万一、トラブルが生じた場合も速やかな対応が可能になります。
現在、サプリを扱う会員の約8割、192社が登録を行い、そのデータに基づく市場分析を、12月16日に初めて公表しました。192社の10年度売上高は計2667億5697万円で、商品総数は5456品目。各社の売り上げ上位3製品の登録によると、最も大きいのは青汁で、素材もケールや大麦など多種多様でした。グルコサミン、ブルーベリーなどの素材も売り上げ上位です。コラーゲン、ヒアルロン酸、プラセンタなど美容系サプリも大きい。ローヤルゼリー、黒酢、にんにく、高麗人参、梅エキス、スッポンなど日本の伝統的な素材も根強い人気がありますね。
――サプリ市場の実像に迫っていますね。広告表示などについては?
宮島 媒体別ではインターネットが168社でトップ。ダイレクトメール、カタログも多く、それぞれ100社を超す企業が利用しています。このところ目立つのはテレビ通販で、全体の3分の1を上回る69社が展開しており、ラジオ通販も思いのほか多く41社が行っています。
「広告表示のチェックを自社で行っているか」「健康食品販売の消費者への注意喚起表示を行っているか」「サプリメントの原材料及び製品レベルの安全性を確認しているか」「安全性のチェックを行う社内の専門部署を持っているか」など、各社に登録を求め、集計結果を公表するとともに、必要に応じて改善指導もしています。
サプリ登録制度は、行政など外部の力に頼るのではなく、業界自らが自浄作用を発揮するための取り組みです。これを機に自主規制に関するセミナーなどを強化し、さらなる業界健全化を働きかけていきます。