日本のサブプライム連鎖 囁かれる「3月金融不安」説

2008年2月号 BUSINESS [ビジネス・インサイド]

  • はてなブックマークに追加

各国が抜本的な対策を打ち出せずサブプライム問題は越年した。米政府とウォール街は切り札としていた共同基金の設立に失敗。米大手金融機関は新興国の政府系投資ファンド(SWF)に資本支援を仰ぎ、アラブ首長国連邦(UAE)や中国、シンガポールからなり振り構わず巨額マネーを取り入れた。日本の金融界も「対岸の火事」では済まされず、3月期末決算が暗雲に包まれてきた。

大手銀行6グループが中間期に公表したサブプライム関連の損失額の通期見通しは3千億円規模。しかし、関連の証券化商品は市場で「買い手不在」が続き、時価がつかない状態。「損失をいくら計上するかは、各行の独自判断に委ねられる」(金融当局)ため、決算をつくる上で裁量の余地が生じている。

メガバンクの間でも、損失処理に対する方針に差が目立つ。みずほFGは通年の損失見通しを1700億円、三井住友FGが870億円と見込んでいる。みずほFGは打撃を受けたみずほ証券を救済するため、1500億円の資本支援を行い、同証券と新光証券の合併も今年1月から5月に延期を余儀なくされた。これに対し、三菱UFJフィナンシャル・グループは上期に40億円しか損失計上しておらず、下期はゼロ。「最大230億円の損失発生リスク」を認めたものの、関連投資残高が2600億円に上るため、金融界でのコンセンサスである「損失率50%」で確定すれば、1千億円以上の利益が吹き飛ぶ計算になる。

傘下のカード子会社、三菱UFJニコスが大幅赤字に転落し、三菱UFJはすでに08年3月期最終利益見通しを8千億円から6千億円に大幅下方修正。サブプライム損失が拡大すればさらなる修正を迫られ、2010年3月期の最終利益目標(1兆1千億円)の達成は事実上不可能になる。

さらに、旧東京三菱と旧UFJのシステム統合も公約どおり08年末に完了するのか、予断を許さない。万一、金融庁が特別検査を通じて「お墨付き」を与えなければ、畔柳信雄社長の経営責任問題に発展する可能性もある。

経営体力でメガバンクに劣る他業態では、サブプライム問題は一層深刻だ。損害保険ジャパンは9月中間決算でサブプライム関連の損失を一切計上していない。ところが、投資家にサブプライム関連を含むCDO(債務担保証券)の元利金支払いを保証する簿外取引にのめり込み、その保証総額は2400億円に膨らんでいる。最終的にどれぐらい損失が発生するのか、「見当がつかない状況」(業界有力筋)という。

また、あいおい損害保険は中間決算で評価損252億円を計上した。しかし、投資残高は1100億円を超えており、半分が焦げつくと仮定すれば、500億円規模の追加損失が発生する恐れがある。

さらに体力の乏しい地域金融機関にとっては、死活問題になりかねない。滝野川信用金庫(東京)は中間期で最終赤字に転落し、サブプライム関連の含み損が143億円に。不測の事態発生に備え、信金中央金庫は資本支援の態勢を急遽、整えた。

実はサブプライム関連の損失を抱える信金は少なくない。決算で問題が噴出する可能性があり、金融当局は3月期決算を控えた今、資金繰りなどの監視を強めている。

   

  • はてなブックマークに追加