モノづくりへの想いを結集! 長谷工マンションミュージアム

日本一のマンションメーカー、長谷工グループが、創業80周年を記念して建設したミュージアムが開館1周年を迎えた。「見て、触れて、感じて、学べる」話題のスポットを訪ねた。

2019年11月号 INFORMATION

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ミュージアムの外観と江口均館長

長谷工グループが、長年にわたって培ってきた技術力とモノづくりへの想いを結集して建設したマンションミュージアムは、緑豊かな東京郊外の多摩市にたたずむ。

小学校5年生以上は無料で見学できるが、事前予約制となっている。ガイドスタッフによる約90分の見学コースが設定されており、初代館長の江口均さんが「マンションのことなら、あれもこれもなんでもお答えします」と胸を張るだけあって、マンションに興味のある人、これからマンションを買おうと思っている人にとって、目から鱗のスポットだ。

360度の大迫力パノラマシアター

ミュージアム内は九つのゾーンに分かれる。まずは「はじまりの物語」からスタート。「マンションってなぜ生まれたのだろう」という素朴な疑問に答えるため、太古の昔から今日のマンションの原点である集合住宅の成り立ちまでを、360度の大迫力パノラマシアターで放映する。スピード感と迫力満点の異空間に思わず体が震えるほどだ。

続くゾーンは集合住宅の歴史を振り返るヒストリカルコーナー。長谷工グループが携わったマンションの中から、約100物件のパンフレットを閲覧でき、更にマンションの販売価格や年間の供給戸数、住宅ローン金利などの推移が、壁一面に展示されている。立ち止まって見入る人も多い。

「お! お!」言葉を失うVR体験

人気の「まるごとマンションづくり」ゾーン

マンションの歴史を知った後に登場するのは、何と昔と現代のモデルルームの見比べ。小物や家具もすべて往時のものを集めて作った1970年代の間取りプランに懐かしさがこみ上げた。隣に現代の最新モデルルームが併設されており、天井とサッシの高さ、部屋の解放感、設備の違いを比較しながら見学できる心憎い演出だ。

続く「まるごとマンションづくり」のゾーンには、実際に利用する鉄筋や部材が展示され、手で触れ、持ち上げることもできる。設計コーナーには、図面を手書きしていた時代からパソコンによる作図まで、設計者のデスクまわりが再現され、エンジニアにはたまらない空間だろう。

このエリアには、3年半の大規模マンションの建設を、約3分30秒で疑似体験する、極め付きのVR体験コーナーが用意されている。映像はいきなり地下深く潜り込み、穴を掘り鉄筋カゴが入れられ、コンクリートが注ぎこまれる場面から始まる。目線を上下左右に動かすと、自在の角度から工事現場を体感することができる優れものだ。「お! お! お!」と言葉を失った。

「五つ星」の企業ミュージアム

続くゾーンのテーマは「再生と長寿命化」。ストックの時代のキーワードとなる建替え、修繕、被災復旧などの取り組みを、近年、長谷工グループが手掛けた大規模マンションの事例をもとに紹介するコーナーだ。

長谷工グループは1937年、個人企業「長谷川工務店」として兵庫県尼崎市で産声を上げ、69年に自社マンション第1号を竣工し、73年にマンション施工戸数日本一(3万5千戸)を達成。これまでに建設したマンションは累計64万戸に達し、この数は日本の分譲マンションストックのおよそ1割に当たる。長谷工グループは、50年前から日本一のマンションメーカーなのだ。

設計技術者歴30年の江口館長は「こちらでは『マンションを、いつまでも。』という、熱い想いを伝えたい。震災復旧のために実施したマンションの耐震改修をはじめ、外観デザインやエントランス改修など、マンションの再生と長寿命化についてもご覧になれます」と強調する。

ミュージアムのオープン(昨年10月23日)から今日までに来場者は5千人を超え、デベロッパーやマンション管理組合の関係者の見学が引きも切らない。「管理組合の方は非常に熱心で、メモを取りながら質問されることがよくあります」(江口館長)

一般の人が、マンションに関することを見て、触れて、実感できる展示であると同時に、専門家をうならせる「よくつくりこんだ施設」であることは、特筆に値する。

ラストゾーンのテーマは「未来の暮らしをのぞいてみよう」。ソフトバンク、東京ガス、YKKAPなど他企業とのコラボレーション展示となっている。江口館長は「近い将来、ここに展示された人工知能と顔認証システムを備えた自動開閉ドア(ドアノブも鍵もない)のマンションが分譲される日が来ると思います」と微笑む。

90分のガイドが「長い」と感じない「五つ星」の企業ミュージアム、必見ですぞ!

(取材・構成/本誌発行人 宮嶋巌)

   

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