連載コラム:「某月風紋」

2026年4月号 連載 [コラム:「某月風紋」]

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かつて株主を「軽視」していた日本企業が、こぞって配当や自社株買いを増やしている。共産党の田村智子委員長は3月2日の衆院予算委員会で、「10年間で大企業は2倍の純利益をあげながら、正社員の実質賃金はマイナス2%となっている。一方、株主配当は2.3倍、自社株買いは3.8倍へと急増している」と高市早苗首相にかみついていた。

投資家からすると株主還元が株高をもたらす「好循環」なのだが、企業が稼ぎを従業員の賃金や国内投資に回さないと、日本は成長せず格差も縮まらない。その意味で、日本の労働分配率は低すぎるのだろう。

東京証券取引所が「資本コストや株価を意識した経営」を要請しつつ上場基準を厳格化しているため、経営者は株価を上げようと躍起になっている。株式の持ち合い解消が進み、親子上場に対する投資家の視線が厳しくなっていることもあり、経営者や親会社がTOB(株式公開買い付け)によって非公開化する動きも加速している。

ホンダが株式の70%弱を保有するユタカ技研は、時価総額より保有する現預金の方が多い知る人ぞ知る割安株。PBR(株価純資産倍率)は0.5倍を下回る。インドの自動車部品メーカーであるマザーサン・グループがホンダの持ち株を譲り受け、TOBで一般株主の持ち分を買い取ろうとしている。ただ、昨年8月の表明直前から今年2月のTOB開始までに日経平均は32%上がったのに、マザーサンが示したプレミアム(上乗せ額)はわずか6%。このため、ユタカ技研の株価はTOB価格を上回ったまま推移してきた。

本来ならTOB不成立のところだが、買付予定数の下限を設けていない。TOBへの応募が10%に届かなかったのに、強制的に安値で買い取れてしまう。少数株主としては、アクティビストや東証がアクションを起こすことを願う。

(ガルテナー)

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