読者の声

2024年4月号 連載

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今年一月、岸田総理は突然「派閥解散」を打ち出した。各派閥が解散を決めていく最中、政治学者の吉田徹はXに「自民党は民主集中制になるのかな?」と皮肉な投稿をした。民主集中制とは「分派禁止」「下級は上級に従う」共産党の組織原理である。派閥擁護の最初の論陣は読売新聞主筆渡辺恒雄によるものだ。著書『派閥』(1958年)のこの一文を読めば、渡辺の主張が軍国主義への強烈な反発に根差すことがわかる。「我が国の保守党が、党首の権力をより一層集中する方向にすすむとすれば、その過去の暗い歴史をふりかえるとき、寒心に耐えぬものがある」。いま自民党から派閥の権力抑制機能を擁護する声が聞こえてこないのは、戦争体験者がいなくなったからだ。派閥は保守の反共主義の理念的根拠であるとともに、戦後民主主義の産物でもあった。今年三月には野党の徹底抗戦に対して「昭和の政治」なる揶揄がなされた。だが失ってはならない「昭和」はある。本誌にはポピュリズム的時流に流されない歴史と体験に根差す論説を期待したい。

政治学者 木下ちがや

   

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