社会人野球を盛り上げる 「日産野球部」念願の復活!

2024年4月号 INFORMATION

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本社野球部の伊藤祐樹監督(右)と四之宮洋介ヘッドコーチ

社会人野球の強豪「日産野球部」がついに復活する。休部した企業スポーツが活動を再開することは非常に珍しい。

日産自動車は昨年9月、野球部の活動再開を決定した。社内の声を受けたもので「日産自動車九州硬式野球部」(以下、九州野球部)は今年、「日産自動車本社野球部」は来年から日本野球連盟に申請、承認を得て活動する。

日産野球部は半世紀にわたる活動のなかで、多くのプロ野球選手を輩出してきたことでも知られるが、2009年、金融危機を受けたリストラ策により、卓球部や陸上部などと共に活動休止の憂き目に遭った。

野球部活動再開の発表にあたり、日産自動車HRオフィサーの井原徹は「事業環境が急激に変化する自動車業界において、大きな変革が求められています。そうした環境下で企業としての成長を果たしていくためには、従業員の意識改革と一体感を醸成するための企業文化改革を推進する必要があります。両野球部の復活を通じてこの活動を加速させると同時に、社員のエンゲージメント向上と地域社会への貢献を目指します」とコメントした。

本社野球部は1959年、主力工場のひとつ、追浜工場のある神奈川県横須賀市を本拠地として創部。都市対抗野球大会と日本選手権大会に過去45回出場し、3回の優勝実績を誇る。休部から15年を経て、かつての選手達は移籍、引退などで残っておらず、練習グラウンドなども手放したことから、一からのチーム作りが必要となる。

昨年12月には、横須賀市と「スポーツ振興に関する連携協定」を締結。スポーツを核としたまちづくりを推進する横須賀市と連係し、野球部の活動を通じて地域の活性化を図っていく。そして新たにチームを率いる監督として社会人野球のベストナインを3回獲得し、ミスター日産と呼ばれた伊藤祐樹が、ヘッドコーチとして伊藤とともにIBAFワールドカップ日本代表に選出された四之宮洋介が就任した。就任会見で伊藤は「日産自動車野球部の復活を強く待ち望んでいた。50年の歴史がある野球部は、いったん歩みを止めたが、また新たに一歩を踏み出すことになった。精いっぱい頑張っていきたい」と語った。

一方、九州野球部は1986年、福岡県京都郡苅田町で活動を開始。両大会に15回の出場実績があり、最高成績はベスト8(94年、96年)である。

休部中は地元のクラブチーム「苅田ビクトリーズ」で活動を継続してきた。昨年12月1日、日本野球連盟から再加盟の承認を受けてクラブチームは解散し、今年1月から社会人チームに移行した。クラブチーム時代に日産以外の地域企業からサポートを受けるようになったことを「チームの財産」と考え、「広域複合企業チーム」の形態を採用。関連企業・協力企業と共に、地域に密着した活動を行っていくという。

日産は「両野球部ともに、都市対抗・日本選手権の出場を目指すと同時に、地元での野球教室の開催や、地域のスポーツイベントへの参画といった地域貢献活動、また社会課題となっている学校の部活動の支援にも積極的にかかわって、日本のスポーツ文化の発展に寄与していきたい」としている。

復活後の地域貢献活動は「チームとしてだけではなく、会社全体で取り組んでいく」という。よりパワフルに蘇った「日産野球部」の奮闘に期待したい。

(取材・構成/編集部 和田紀央)

   

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