2024年3月号 連載 [コラム:「某月風紋」]
米国の映画祭の第96回「アカデミー賞」のシーズンを迎えている。米映画芸術科学アカデミーは1月23日、作品賞や主演の男女それぞれの俳優賞などの候補作を発表した。「オスカー」が受賞者に贈られるのは3月10日。
日本制作の作品としては国際長編映画賞候補に、ヴィム・ベンダース監督の『PERFECT DAYS』。視覚効果賞候補に『ゴジラ-1.0』(山崎貴監督)が、長編アニメーション賞候補には『君たちはどう生きるか』(宮崎駿監督)である。
国際映画祭のなかで、3大映画祭はベルリン、ヴェネチア、カンヌ。映画通の噺家の立川談志さんは、『雨月物語』(溝口健二監督、1953年)がヴェネチア国際映画祭において銀獅子賞を獲得したことについて「この年はなんといってもアカデミー賞の『ローマの休日』が最高だ」と批判していた。
『羅生門』などの作品で、3大映画祭とアカデミー賞を受賞して、その壁を崩したのは黒澤明監督。世界の映画界が日本を発見した。モノクロ映画の『無法松の一生』のデジタル化に取り組んだのはフランシス・コッポラ監督である。
最近では、濱口竜介監督が『ドライブ・マイ・カー』などで黒澤監督に続いた。日本の監督や脚本家がいま世界に飛躍しているのは、日本のコンテンツ制作能力が質ばかりではなく量においても水準が高いことにある。東京工業大学名誉教授の出口弘さんらが編纂した『コンテンツ産業論』(東大出版会)は、日本だけが歌舞伎や文楽、小説、映画、コミックなどが相互に物語を取り込みながら、大量のコンテンツを創造できる、と指摘している。
Netflixの制作で世界約200カ国に配信された『今際の国のアリス』は、世界1位の座に日によってついたseason1、2に続いて3の制作配信が決まっている。原作はコミック。登場人物たちがサバイバルゲームを繰り広げる。
(河舟遊)