2024年2月号 連載 [コラム:「某月風紋」]
政府支出は膨張を続けているのに、真に必要とする人には必ずしも届いていない。2024年度予算の目玉は「こども・子育て政策の強化」で、児童手当の拡充や高等教育の負担軽減が盛り込まれた。時宜にかなっているようにもみえるが、支持率の向上にはつながらなかった。
これは賢明な国民が財政悪化を心配している証左かもしれない。コロナ禍から平時に戻ったのに、一般会計の歳出総額は112兆円と過去2番目に多い。税収は過去最高の69.6兆円を見込み基礎的財政収支の赤字は少し減るが、借金残高は増え続けている。
しかも着地がどうなるかはわからない。20年度以降、多額の補正予算を編成して財政規律が完全に失われているからだ。20~22年度は平均36兆円、コロナが収束した今年度も13兆円超の補正を組んだ。日本は決算で歯止めをかける仕組みがない。
金利上昇も心配なところ。これまでは日銀のマイナス金利政策とイールドカーブ・コントロール(YCC)で抑え込んできたが、いよいよ今年は出口に向かう。長期金利は上昇すると考えるのが自然。国は来年度の利払い費が2.1兆円増え9.7兆円になると想定している。2000年度以来の高い水準だ。
翻って地方自治体。地方債残高を順調に減らしているから来年度の公債費は4千億円減の10.9兆円を見込む。総務省自治財政局の幹部は「借り換えが少ないから国より金利上昇の影響は小さい」として利払い費の見通しも公表していない。
先ごろ公開された22年度の決算統計を分析すると、地方の利払い費は合計7636億円だった。平均金利は0.54%と極めて低い水準にとどまっている。仮に1%上昇しただけで利払い負担は計算上、1兆4100億円増える。大地震と航空機の衝突事故で始まった今年が、日本にとって厄年とならないことを願う。
(ガルテナー)