時代を先取り! ファンケル「置き配」でポイント付与

運送会社にも地球にもやさしい戦略で「物流2024年問題」の社会課題解決に貢献。

2024年2月号 INFORMATION

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玄関先に設置できるバッグタイプの宅配ボックス「OKIPPA」

コロナ禍で通販サイトの利用が普及し、非対面で荷物を受け取れる「置き配」が急速に浸透している。再配達を依頼する手間が減り、忙しい現代人に重宝されているようだ。一方で、2024年4月以降、働き方改革に関する法律施行によりトラックドライバーの労働時間が減り、物流が停滞する「物流2024年問題」が懸念されている。

内閣官房は23年10月6日に閣僚会議を開き、緊急対策として「物流革新緊急パッケージ」をまとめた。何も対策を講じなければ、24年度に14%、30年度には34%の輸送力不足となる見通しだ。宅配においては、現在12%の再配達率を6%に半減させることを目標とし、今後、政府主導で「置き配」のポイント還元の実証実験を行う予定となっている。

ファンケル広報部長の大塚肇さん

政府の危機感に呼応するように、通信販売を長年手がけるファンケルならではの迅速な取り組みが、脚光を浴びている。24年1月下旬から2月末までの期間限定で、商品の注文時に「置き配」(在宅・不在にかかわらず、押印不要で、指定した場所にお届けする配達方式)を選択したお客様に、ファンケルでのお買い物に活用できる「ファンケルポイント」を付与するサービスを実施することにした。「置き配」を選択して注文すると1回当たり10ポイント(10円)が付与される。費用はファンケルが負担し、結果は公益社団法人日本通信販売協会などに報告し、社会実装の参考にしてもらう考えだという。

広報部長の大塚肇さんは、「当社の創業理念である世の中の『不』の解消に基づき、そして『置き配』におけるこれまでの経験を活かし、物流業界や日本社会の課題解決に貢献したいと考え、サービス実施に至りました」と語る。

97年に始まったファンケルの「置き配」

ポストに入る薄型パッケージ(円内は92年に開発した薄型の容器)

ファンケルが、業界に先駆けて「置き配」に立ち上がったのは、実に20年以上も前のことだった。1975年の創業から、無添加化粧品や健康食品の通信販売を主体としてきたファンケルの歴史は、女性の社会進出が進み、在宅率が低下していった軌跡とも重なる。「不在時の受け取り」の不便をなんとか打破しようと、まずは92年、ご自宅の郵便ポストにも入れやすいパッケージのスリム化に着手。厚さを3㎝以内にして、狭い隙間にも投函できるようにした。

次に、大きな商品も受領印なしで、お客様指定の場所に届けられないか、模索を始めた。その結果、1997年に始まったのが、現在の「置き配」のルーツといえる「置き場所指定お届け」サービスである。「受領印不要を承諾してくれる運送会社を探すのが大変でした。紛失した場合には、代替品を再送すると約束して、納得してもらいました」と、ファンケルの大塚さんは語る。

8種類の置き場所から第2候補まで選択できる

置き場所の指定は、玄関前や自転車のかご、ときには外置きの洗濯機や犬小屋の中(!)ということも。運送会社が負えない責任を負担してでも、顧客の不便を解消しようとする姿勢が徹底している。

ファンケル独自の奮闘に、時代が追い付いてきた。2019年、日本郵便の「指定場所ダイレクト」サービスに移管。置き場所は「玄関前・メーターボックス・ポスト・物置・車庫・宅配ボックス(マンションなどに設置されるロッカー型設備)・自転車のカゴ・玄関前鍵付容器」の8種類から、第二候補まで登録することができる。

さらに、不在時のみならず、在宅でも手が離せない、チャイムを押してほしくない、といったお客様のさまざまなニーズにも対応する。21年11月にはスペースがなくても玄関先に手軽に設置できる鍵付きのOKIPPAバッグ(バッグタイプの宅配ボックス)の販売を開始し、利用者が広がっているという。

《お届け事例》ガスメーター

「置き配」の問題発生率は0.002%

《お届け事例》玄関前

直近では23年4月から9月のファンケルの通販受注件数のうち、約3件に1件で「置き配」が利用されている。そのうち、置き場所の間違いなどの問題発生率は0.002%(5万件に1件)。つまり「置き配」の再配達率はほぼ0%である。それによってドライバーの負担を軽減し、さらには再配達時に発生するコストやCO2の削減にも貢献するなど、お客様だけではなく運送会社や地球にもやさしいサービスなのである。

ファンケルは、24年に38%の「置き配」受注率を目指していく。複数回の注文をまとめることでファンケルポイントを付与する「おまとめ配送」の推奨によって配達回数を減らす取り組みも行う。さらに、環境に配慮した取り組みとして、お届けする荷物に同梱する「お届け明細書」の不要率も高めていくという。

《お届け事例》自転車のカゴ

物流問題が顕在化するにつれ、ファンケル形式の「置き配」を取り入れる企業も増えているという。大塚さんは「『置き配』のさらなる推進に加えて、受け取り方法の多様化や、配達日時指定の柔軟化など、多面的な取り組みを通じて、物流の課題に積極的に貢献していきたいと思います」と語る。常に変化する世の中の「不」に取り組んできた努力が今まさに花開いている。

(取材・構成/編集部 和田紀央)

   

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