2024年1月号 連載
創刊間もない2008年1月号の本欄に寄稿を求められ、FACTAの魅力として、骨太のスクープ、事の深層・本質に切り込む気迫と分析力、編集者の個性の三点を挙げた。その考えに今も変わりはないが、男女関係と同じで17年間も付き合っていると様々な感慨が湧いてくる。
FACTAが世間で重きをなすようになったのは、昔の恋人が出世したようで慶賀の至りだが、批判の矛先が自分たちに向けられたときには愛憎相半ばという気分になる。また社会の病巣を抉り出す記事が多いせいか、読んでいて憂鬱な気持ちになることが少なくないが、その中にあって田勢康弘氏の「世は歌につれ」や柴崎信三氏の「美の来歴」といった連載は同誌の清涼剤と評すべきもので、先月号から始まった柳辰哉氏の「源氏物語を『楽しみ尽くす』方法」にも同様の期待を寄せている。
偏屈で気難しいのに時折見せる優しさが魅力で、別れようにも別れられない。そんなFACTAだが、日本に良い意味で緊張感を持たせる存在であり続けることを期待したい。
日産証券株式会社取締役 小野里光博