「令和の風雲」自公10年政権に物申す!/特別寄稿 小沼 巧・参議院議員

政府与党が主張する政策成果なるものは、本当に良かったのか。検証なき追従は有害であり、検証なき新機軸は蛮勇だ。

2023年10月号 POLITICS

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おぬま・たくみ 1985年茨城県鉾田市生まれ、37歳。早大政経学部卒業後、経産省やボストン・コンサルティングに勤務。2019年7月参議院選挙初当選。立憲民主党所属。

令和5年1月27日、私は「自公政権10年間の総決算」を問うべく代表質問を行い、この国の危機感を訴えました。官民双方の経験と若造の感覚を総動員するとともに、過去の早大雄弁会OBや現在の地元国会議員の演説を勉強し、気合いを入れて演説を行いました。新人かつ会派最年少(37)の私が総理大臣に物申すチャンスを与えて下さった諸先輩に感謝しています。

臭い物に蓋をする政府与党

対立軸が鮮明だったのが自民党の代表質問です。曰く「悲観論からは何も生まれない」。曰く「日本は凄い」。曰く「日本にはとてつもない力がある」。一見なるほど、と思えなくも無いが、昭和60年生まれの私としては、強い憤りを覚えました。

私は右肩上がりの日本社会や経済を経験していない世代の一人です。「日本は戦争に負けたが奴隷になったのではない」、「荒れ果てた日本を立て直すには政治しかない」等々、先人たちの熱い気持ちと努力によって戦後日本は経済大国になったと学校で教えられてきたはずなのに、現実は異なる。悔しい思いです。一人当たりGDPや平均賃金は下落し続け、いずれも韓国に追い抜かれています。

もはや日本は経済大国とは言えなくなっており、潜在成長率もほぼ0%まで落ちぶれています。他にも、科学技術で世界をリードしていたと教えられてきたはずなのに、コロナ禍ではワクチンすら自国で開発できない現状を思い知らされました。安心・安全な国だと教えられてきたはずなのに、医療崩壊や自宅待機を余儀なくされた現実にも直面してしまいました。それにもかかわらず、明治時代や高度経済成長期の美談に酔い、見たくない現実から目をそらし続けて美辞麗句を吹聴する政府与党の姿勢は、まさに「臭い物に蓋をする」。別の政権が3年あったにせよ、自公連立政権成立から10年以上も経過しているのに、日本の途轍もない力を引き出せず、日本を凄いと内外に実感させることもできなかった主語は誰か。間違いなく自公政権です。世代間対立を煽る意図はありませんが、時の権力者に物言わず、長いものに巻かれ、国難に直面しても沈黙する与党議員の先輩諸兄姉には、真剣に考えていただきたい。100兆円の国家予算を掲げても少子高齢化や人口減少、30年にわたる経済低迷を反転攻勢できなかった今の日本を。多くの借金を背負わされる私のような世代の将来不安を。社会状況に合わなくなった古い改革ばかり推し進める政治に対する、国民の静かな苛立ちを。

高度経済成長の余韻に浸る自公政権が言っていることは、本当に正しいのか。自公政権が主張する成果なるものは、本当に良かったのか。検証なき追従は有害であり、検証なき新機軸は蛮勇だと考えます。参議院は、衆議院と異なり、長期的視野に立った政策効果の検証が期待されています。長らく解決困難であり続ける課題が山積する中、これらを克服し、日本が永続的に発展していくためには、行財政執行の適正化を徹底することが不可欠です。与党や省庁が忖度して物言わず、国会論戦を避けて国民が忘れるのを待ち、かたや歴史の叡知を大切にする保守主義を自称するのに、都合が悪いことを隠し、定義をしれっと変える「革新主義的」な政治を行う自己矛盾を悪びれもしない現政権が幅を利かせているからこそ、決算重視の参議院の矜持にかけて自公政権の検証を行うべきです。

絆創膏の上に絆創膏を貼る

簡単に政権交代後の10年間を振り返ってみます。経済政策では「アベノミクス(①大胆な金融緩和、②機動的な財政政策、③投資を喚起する成長戦略)」を掲げたが、成功失敗の検証をせず、すぐに「新アベノミクス」と言い出しました。その中身は、①希望を生み出す強い経済(GDP600兆円)、②夢を紡ぐ子育て支援(出生率1.8)、③安心につながる社会保障(介護離職ゼロ)というものでしたが、忘れてしまった国民が大多数ではないでしょうか。実際、できたかできなかったか分からないうちに今度は「生産性革命」、「一億総活躍」、「働き方改革」など別のことを言い出しました。そして菅内閣では「DX」や「GX」など流行に踊らされそうなことを言い出し、岸田内閣では「新しい資本主義」を言い出しました。「一人当たり名目国民総所得を10年間で150万円増」、「10年平均でGDPを実質2%、名目3%成長」、「2020年までにGDP600兆円」。これらの宣言は、まったく実現できていません。

外交政策では「地球儀を俯瞰する外交」を掲げましたが、我が国の国家主権及び国民の生命と安全に関わる重大問題である北朝鮮による拉致被害者の帰国は実現できず、北方領土問題では二島先行返還に舵を切ったが交渉の成果は無く、プーチン大統領に手玉に取られただけでした。農林水産政策では「10年間で農業・農村所得を倍増」と宣言していたのに、これも実現できていません。全体の2%程度に過ぎない輸出拡大を誇っても木を見て森を見ずであり、生産農業所得にどれだけ裨益したのか不透明です。過去15年分の概算要求と実際の査定率を分析すると、自公政権下では軒並み2桁台の査定率が続いており、「自公政権は、民主党政権よりも、農林水産業を大切にしていない」と言っても良いのが数値から明らかです。

次々とアドバルーンを打ち上げ何かやっている雰囲気だけはいつも演出しているけれども、よくよく振り返ってみると結果がついてきていません。検証も決算も真面目に行わない政治が政府与党に蔓延しているからこそ、絆創膏の上に絆創膏を貼るような弥縫策ばかり乱発する政治になっているように思えます。

間違った行政運営を質すべき国会においても、形骸化を助長する愚行が自公政権に蔓延しているように思えます。巨額予備費の乱発による予算審議権の無力化が、その最たる例です。アベノマスク約466億円は記憶に新しく、国会審議を無視して5カ月もLPガス支援策を放置し「緊急性を人工的に作り出す」予算執行、ワクチン確保に関して本来無用な18億9千万円の信託報酬・運用差損を発生させた事例など、予算委員会や決算委員会で厳しく指摘して来ました。予算編成に対する真剣さが足りず、安易に予備費に頼れば良いと勘違いしているから、無駄遣いや場当たり的な政策運営が繰り返されています。これでは政権の言うことが信じられなくなり、政治不信に拍車がかかるばかりです。政府与党は自らの無為無策を放置した挙げ句に、一切悪びれず、他に選択肢が無く手遅れになるまで国民を追い込み、国民を諦めさせる政治を行っています。

しかし、諦めたらそこで試合終了です。冷笑主義的で諦めさせる政治を正すためには、有権者の力を借りるしかありません。国会ではどんな論戦が行われているのか。与野党の質疑内容、政府の答弁、熱烈なヤジによる議論参加等々、気づきを得られるチャンスが沢山あります。参議院だけでも常任委員会が17、特別委員会が7つ程度、調査会が3つ存在し、すべてチェックするのは大変ですが、野党が反対やスキャンダルばかりではないことも見えてくるはずです。立法府の末席を汚す私自身も、緊張感あふれる面白い国会論戦を心がけることで、お一人おひとりに関心を持っていただけるよう研鑽を積んでいきたいと思います。

   

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