2023年8月号 連載 [コラム:「某月風紋」]
日米とも株価は堅調だが、あるファンドマネジャーは米国について、「今はスーパーバブル。1~2年以内に大転換が襲ってくる」と話していた。FRB(連邦準備制度理事会)による利上げは、しばらく続くとしても早晩終了する。来年には利下げも期待され、そうなると株価にはプラスとの見方が一般的だ。ところが、ファンドマネジャー氏曰く「利下げは大暴落のトリガーを引く」。
過去の利下げ局面を調べてみると、ITバブルがはじけた2000年は利下げが始まる少し前に株価はピークをつけていた。リーマン・ショック前年の07年は、FRBが利下げに転じた直後が株価のピークだった。いずれもその後、長くて深い調整を強いられた。
同じ道をたどるとは限らないが、当時の教訓を生かすなら利上げが続いている間は株を買い増し、利上げが終了したら様子見に転換。そして利下げが視野に入ったら売る、というのが一つの戦略になる。
バブル後の高値を更新してきた日本株は、PERやPBRなどの指標面でまだ、割高感はない。長らく割安なまま放置されていたのが、ようやく見直された形だ。米著名投資家のウォーレン・バフェット氏の「商社株買い」もあり、外国人投資家の買いを集めている。
外国人にとって大きいのはいまの円安で、植田和男・日銀総裁の発言などから「日銀が利上げに動くことはない」と高をくくっている。その通りなら円安と株高が続くが、長期金利を一定範囲内に抑えるイールドカーブ・コントロール(YCC)の上限引き上げなどに踏み切れば、一気に逆回転してもおかしくない。
消費者物価指数(CPI)は3%超の上昇が続いている。日銀は政策変更による悪影響を心配しているが、引き締めが遅れることによる弊害の方が大きいとそろそろ気づくかもしれない。
(ガルテナー)